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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年1月21日 No.3484 解説 報告書「産業の動向と見通し及び当面の政策課題」〈下〉 -景気認識を踏まえた当面の政策課題

経団連は12月15日、報告書「産業の動向と見通し及び当面の政策課題」を公表した。連載の最後である今回は、これまで解説したマクロ経済と産業の動向を踏まえ、当面2~3年で重要となる政策課題について説明する。

■ 喫緊の課題

11月下旬からの感染再拡大と、再度の緊急事態宣言の発出により、景気の下押し圧力が強まっている。とりわけ、宿泊、飲食、交通、エンターテインメント等の産業については、これまでも甚大な悪影響を被っており、さらに打撃を受ける可能性が高い。

感染拡大の防止が最優先課題である一方、今後、これらの産業を中心に、失業・倒産の急増が懸念されることから、機動的に対策を講じていく必要がある。

具体的には、雇用調整助成金や各種の事業継続支援策等について、状況に応じ、内容や対象の拡充、期間の延長等が求められる。

Go To事業については、コロナ禍の被害が大きいサービス産業から期待する声は大きい。今後の感染状況を踏まえ、適切なタイミングで再開することが望ましい。

■ 経済・社会構造の転換を促す政策

中長期的に目指す経済・社会を展望した各種の政策も、今から着実に実行する必要がある。経団連は目指すべき社会像として、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じたSociety 5.0の実現と、それによる国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成への貢献であるSociety 5.0 for SDGsを掲げている。

まずカギとなるのが、DXの推進である。税財政措置、規制・制度改革など、あらゆる政策手段を講じることが求められる。特にデジタル人材の育成・確保が喫緊の課題となっていることから、大学教育、リカレント教育、職業訓練等を充実する必要がある。このほか、デジタル庁の創設や公的部門のデジタル化も社会全体のDX化に寄与することが期待される。

グリーン成長も極めて重要な分野である。政府の掲げる「2050年カーボンニュートラル」という野心的な目標の実現に向け、取り組みを抜本的に強化し、経済と環境の好循環を創出していく必要がある。特に重要な分野については国家プロジェクト化し、民間の挑戦を最大限促進すべきである。

地方創生も重要な柱である。東京等の大都市圏の活力・競争力向上を図りながら、各地方の中核となる都市機能の向上と、都市間の連携による「多核連携型の国づくり」を目指すべきである。

■ 人材力の強化と人の移動の促進

人口減少が続くわが国においては、人材の質を高め、生産性向上に取り組むことが不可欠である。コロナ禍を契機に構造変化が加速するなかにあっては、より高い付加価値を創出する企業・産業や人手不足にある企業・産業へと、企業間、業種間、さらに地域間をまたぐ労働移動を促す必要がある。

例えば、いわゆるエッセンシャルワーカーと呼ばれる、経済・社会の安定・円滑な運営に不可欠な分野(医療・介護、運送・流通、建設、農業等)の労働者の確保が喫緊の課題となっている。コロナ禍によって、失業・非労働力化した人々の就労を支援するとともに、IT利活用等の生産性向上もあわせて進めることが求められる。

【経済政策本部】


解説 報告書「産業の動向と見通し及び当面の政策課題」
〈上〉マクロ経済の現状と見通し
〈中〉コロナ禍による影響が大きい産業の現状と見通し
〈下〉景気認識を踏まえた当面の政策課題

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