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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年1月14日 No.3483 解説 報告書「産業の動向と見通し及び当面の政策課題」〈中〉 -コロナ禍による影響が大きい産業の現状と見通し

経団連は12月15日、報告書「産業の動向と見通し及び当面の政策課題」を公表した。連載2回目は、今次のコロナ禍による影響が大きい産業に関する分析を紹介する。

■ 著しい業績下押しに見舞われている産業

新型コロナウイルスの感染拡大により、経済活動に大きな制約がかかり、特にサービス業が甚大な影響を受けている。




宿泊業は、感染拡大に伴い、国内外の移動に制限がかかったことから、宿泊者数が急減し、2020年5月には、前年同月比マイナス85%の大幅減となった。Go Toトラベル事業が回復を後押ししたが、11月時点で同3割減となっている。

飲食業界は業態によって、影響の深刻さが異なる。テークアウト利用の多いファーストフードの落ち込みが軽微な一方、居酒屋などは、Go Toイート事業の押し上げ効果があっても、11月までのところ、同4割減程度の回復にとどまる(図表1参照)。

交通産業は、ビジネス・観光のどちらの需要も急減した。鉄道旅客輸送は、5月を底に減少幅は縮小傾向にあるが、同2~5割減で推移している(図表2参照)。航空需要も低迷しており、特に国際線の旅客数は11月まで同マイナス95%前後の大幅減が続いている。

今後については、これらの産業に属する上場企業の多くが、10月下旬から11月中旬にかけて、7-9月期の四半期決算で業績見通しを示した。その多くは、緩やかなコロナ禍の収束と経済活動の正常化を前提としている。しかし、11月下旬からの感染再拡大と再度の緊急事態宣言の発出により、さらなる業績悪化は避けられないとみられる。

■ 構造変化の加速が好影響を及ぼしている産業

コロナ禍によって、デジタル化の動きが加速し、好影響を受けている産業がある。

情報サービス業については、これまでもDX(デジタルトランスフォーメーション)による事業革新に向け、企業がデジタル化に投資してきたことから、拡大が続いていた。コロナ禍で非対面・非接触をはじめとする「新しい日常」の動きが活発化するなか、さらなる投資拡大が期待される。

米国の調査会社ガートナーの世界のIT市場規模予測によれば、データセンターシステムと企業向けソフトウエアについては、20年は前年から減少するものの、21年には19年の水準を上回るとの見通しが示されている。

堅調なDX投資を背景に、それをハード面から支える半導体・電子部品・半導体製造装置といった産業についても、今後の成長が期待できる。電子商取引は、インターネットの利用普及により、趨勢的に市場規模が拡大してきた。コロナ禍による巣ごもり消費を機に、足もとでこの動きがさらに加速している。

同様に、デジタルコンテンツも、巣ごもり消費の追い風を受けている。ドイツの調査会社スタティスタは、20年のデジタルコンテンツ(動画配信、音楽配信、電子書籍、ゲーム)の世界市場規模は、前年比10%超、21年以降も成長が続くと見込んでいる。

次号では、主要な政策課題について解説する。

【経済政策本部】


解説 報告書「産業の動向と見通し及び当面の政策課題」
〈上〉マクロ経済の現状と見通し
〈中〉コロナ禍による影響が大きい産業の現状と見通し
〈下〉景気認識を踏まえた当面の政策課題

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