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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年1月7日 No.3482 安全保障分野における宇宙開発利用の課題を聴く -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

経団連は12月9日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(田熊範孝部会長)の合同会合を開催し、東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授から、安全保障分野における宇宙開発利用の課題について説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 宇宙と安全保障

現代の安全保障を考えるうえで、宇宙システムは不可欠な存在になっている。宇宙システムは、防衛装備品のネットワークの接続性を確保する通信手段である。また、衛星により、情報収集、測位、偵察、通信、早期警戒能力が確保される。戦闘の無人化や自動化が進むなかで、衛星を使ったシステムが重要になっている。

いまや宇宙空間は戦闘領域となった。紛争に至る前の段階で、衛星が最初の攻撃対象となる。宇宙システムや衛星が妨害、破壊されると、軍事的、社会・経済的に大きな被害が生じる。宇宙空間では人的被害は生じないため、攻撃へのハードルが低い。加えて、衛星が破壊されても、攻撃と宇宙ゴミ(デブリ)の衝突のいずれが原因か即座に判断できず、報復しにくい。

宇宙空間における衛星に対する攻撃の制限は、世界的な課題である。衛星に対する攻撃は、物理的な攻撃では大量のデブリが発生するため、電波やレーザーで妨害する非物理的な手段が中心になっている。

■ 宇宙状況監視と機能保証

宇宙空間における安全保障の確保に向けて、宇宙空間の情報をレーダーや望遠鏡で収集する宇宙状況監視(SSA=Space Situational Awareness)は不可欠である。一国で監視できるのは自国上空の軌道のみであるため、世界各国と情報を共有するSSAのネットワークが重要となる。

わが国では、防衛省・自衛隊が米国とSSAの協力を進めている。特に、西太平洋上空の監視において、米国はわが国の協力を求めている。2020年は航空自衛隊に宇宙作戦隊を新設し、SSA能力の向上を図っている。

また、宇宙システムが能力を喪失した場合でも、他の手段で代替して機能を継続できるという機能保証の概念が重要である。例えば、米国のGPSの機能が停止しても、わが国の準天頂衛星の7機体制が確立すれば、アジア地域やオーストラリア上空における測位機能は代替可能である。

■ わが国の課題

20年6月に改訂された宇宙基本計画では、自立した宇宙利用大国を目指し、宇宙安全保障等を柱として掲げている。宇宙安全保障については、日米同盟の強化が最も重要であり、早期警戒機能に関する小型衛星のコンステレーションなどにおいて米国との連携を進めることとしている。

一方で、宇宙開発において日米の一体化が進むなかで、米国への依存度が高まりつつある。日本独自の取り組み、米国と協力する分野、欧州等と協力する分野を明確に分けていくことが今後の課題である。

【産業政策本部】

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