経団連の榊原定征会長は5日、東京・大手町の経団連会館で記者会見を行った。
榊原会長は、新政権発足に向けて政権移行チームが動き出した米国に言及。トランプ次期大統領のTPPからの撤退表明、NAFTAの見直しに向けた発言は、日本経済に影響する問題であり、特に日本企業は、発効済みのNAFTAを活用したサプライチェーンを確立しており、見直しは大きな影響をもたらす可能性があると指摘。こうした実態を日本の経済界はきちんと発信し、理解を求めていくことが大切であり、経団連としても、米国への経済ミッション派遣を来年も引き続き実施したいとした。日本企業9000社が米国で事業を展開し、170万人の雇用を創出していると説明。日本経済界による米国経済への大きな貢献を米国新政権によく理解してもらうよう努めると述べた。
また、イタリアの国民投票結果を受け、レンツィ首相が辞任を表明したことについて、新たな国際社会の不安定要因となりかねず、政治の空白期間が生じる可能性もあるため注視が必要との認識を示した。これに関連し、首相自ら対応に当たっていたイタリアの銀行の不良債権問題がどのようなかたちで帰結するのか、今後の動きを注意深く見守りたいと述べた。加えて、「5つ星運動」など新興政党の動向にも注目していく必要があるとした。
日本企業は約140社がイタリアに進出し、総投資額は4200億円に上ると説明するとともに、2万7000人の雇用を創出し、EUのなかでも大きな存在感を示していると述べた。そのうえで日本経済に今すぐ直接的で大きな影響はないだろうが、日本企業のイタリアでの事業活動への影響を注視していく必要があるとした。
また、IR推進法案の国会審議をめぐり、カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備に言及。日本再興戦略で観光振興とMICEの誘致が大きな方向性として示されており、日本経済にとって意義あることと理解していると述べた。他方、カジノについては、ギャンブル依存症、マネーロンダリングなどの犯罪に対する懸念や慎重論が存在していると指摘。これを踏まえ、拙速な審議は避け、国民の理解を幅広く得られるようなしっかりした審議を求めた。
【広報本部】