経団連は11月15日、東京・大手町の経団連会館で、米国バージニア州のテリー・マコーリフ知事ならびにトッド・ヘイモア商務長官、バジル・グッデン農林長官をはじめとする州政府幹部との朝食懇談会(座長=村瀬治男アメリカ委員長)を開催した。
経団連とマコーリフ知事との懇談は、2014年秋の来日時、15年夏の経団連訪米ミッションに続き3度目となる。バージニア州側の説明の概要は次のとおり。
■ 米国大統領選の総括
ビル・クリントン元大統領、ヒラリー・クリントン前国務長官の大統領選にかかわった経験がある。「フォーチュン500」に名を連ねる企業経営者や米国メディアの多くがヒラリー氏を支持していた。他方、米国民とりわけ中間層は経済的な恩恵を十分に得られないことに怒りを覚え、既存政治やエスタブリッシュメントに反対の意思を示した。ドナルド・トランプ次期大統領はその怒りを利用し、勝因をつくった。
選挙人の獲得数ではトランプ次期大統領が上回ったが、得票数ではクリントン氏の方が多く獲得している。過去4回の大統領選で、獲得した選挙人数と得票数が逆転したことが2回ある。選挙人の勝者総取り方式は、トーマス・ジェファーソン第3代大統領が、人口が少ない州の権利を守るために導入した制度であるが、インターネットが発達した現在、同方式は現実にそぐわないと考える。
■ TPP実現の見通し
トランプ次期大統領は自由貿易に反対し、TPP(環太平洋パートナーシップ)からの撤退を主張している。米国の議会指導部もレイムダック期間中の同協定案の審議は行わないと明言しており、実現の見通しは暗い。
バージニア州は「新バージニア経済」という成長戦略を掲げ、外国直接投資、貿易、観光の拡大を目指しているが、そのためにTPPの実現は不可欠である。加えて、TPPはアジア・太平洋地域における地政学的重要性を持つことから、TPPが実現しなければ、貿易投資ルールづくりの主導権を中国に奪われ、米国の影響力低下につながるおそれがある。
トランプ次期大統領は強い米国経済の復活を訴えているが、そのためにはグローバル経済を大事にしなければならず、自由貿易の重要性を理解する必要がある。私が会長を務める州知事会としてもそのことを訴えていくつもりだ。
【国際経済本部】