経団連は6日、金融庁との懇談会(座長=釡和明金融・資本市場委員長)を開催し、古澤知之審議官から、最近の企業会計・会計監査・開示・コーポレートガバナンス関係の取り組みについて説明を聞き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
1.企業会計
日本における国際会計基準(IFRS)の適用企業は順調に増加している。
今後の課題の1つとして、IFRSに関して国際的な場で意見発信できる人材プールの構築が挙げられる。企業を含む関係者と十分に協議・連携して、人材を登録する側にとってもメリットのある仕組みにしたいと考えているので、協力をお願いしたい。
2.会計監査
「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言に基づき、会計監査の信頼性確保のため、次のような取り組みを進めている。
監査法人の組織的な運営のためのプリンシプルを確立するため、監査法人のガバナンス・コードの策定に向けて検討を進める。現在、「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」で審議しており、年内をめどに素案策定を目指す。
監査法人のローテーション制度では、EUにおける導入等の状況変化も踏まえつつ、わが国における同制度の導入に伴うメリット・デメリット等に関して、深度ある調査・分析を実施する。
監査報告書については、株主等への情報提供を充実させる観点から、監査人が着目した虚偽記載リスク等の記載を求める制度の導入を検討すべきとの意見がある。まずは同制度導入のメリット・デメリット等について、関係者にヒアリングを行っているところである。
3.開示
金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの報告を受け、金融審議会市場ワーキング・グループのもとにフェア・ディスクロージャー・ルールの導入に向けた検討で会議体を設置し、年内をめどに結論を得るよう審議予定である。
事業報告等と有価証券報告書の開示内容の共通化について、企業の協力を得て、関係省庁では実際の開示事例に基づく対照表を作成している。その結果を踏まえ、さらに共通化が可能な項目の有無等を検討予定である。
4.コーポレートガバナンス
コーポレートガバナンス改革は着実に進んでいる。この改革を「形式」から「実質」へと深化させていくため、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」では現在、運用機関におけるガバナンス・利益相反管理の強化、パッシブ運用におけるエンゲージメントの促進、アセットオーナーから運用機関に対する働きかけ・チェックの強化、運用機関等による議決権行使結果の開示の充実等について議論を行っている。
<意見交換>
「国際会計人材の育成では企業による取り組みの促進が重要」「監査人と企業のコミュニケーションが不足しており、監査法人のガバナンス・コードでこれを促すべき」「監査法人のローテーションは便益に見合わない負担を企業に強いることのないよう慎重に検討すべき」「海外機関投資家は議決権行使助言会社の助言に基づき機械的に株主総会の賛否を決めることが多く、スチュワードシップ・コードの見直しで何らかの対応を検討すべき」など、活発な意見交換がなされた。
【経済基盤本部】