経団連の教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)は9月8日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、グローバル人材戦略研究所の小平達也所長から、日本企業の外国人留学生採用・活用の現状と課題について説明を聞くとともに意見交換した。
説明の概要は次のとおり。
■ 日本企業の外国人留学生採用のトレンド
外国人留学生の日本企業等への就職者数は、2003年には約3800人だったが、14年には約1万3千人となり、12年間で3倍に増加している。留学生の主な国籍と地域別内訳をみると、アジアからが大多数(約94%)を占めている構図に大きな変化はなく、中国と韓国で7割以上を占める一方、非漢字圏の国・地域からの留学も増えており、特にベトナムは対前年比44%増と伸び率が高い。
■ 日本企業が外国人留学生を採用する目的
日本企業が外国人留学生を採用する目的は主に3つの類型に分けられる。第1は国籍不問採用で、特に「外国人留学生」にかかわらず、優秀な人材を確保するために日本人学生と同様の選考基準で外国人留学生を採用するものである。第2は、グローバル(ブリッジ)要員としての採用で、特定の海外の取引先に関わる部署への配属など、より具体的な目的のための採用である。第3はダイバーシティー強化、異分子による活性化(イノベーション)への効果を期待した採用であり、近年ではその重要性が認知され増加傾向にある。
■ 本社における外国人社員の活用における課題と各社の取り組み
日本企業で働く外国籍社員が抱く不満の主なものとして、(1)キャリアがみえない(2)役割が不明確(3)上司からのフィードバックがない――が挙げられる。いずれも、解決策のカギを握るのは上司のマネジメント力、人材育成能力の向上である。マネジメント能力研修は、コミュニケーション・マネジメントの好事例の共有による知識移転を目指す全社を対象とした「制度的」な研修と、外国人社員からの提案を引き出す対話技法のテクニック習得などの職場を対象とした「風土的」研修の2つに分類されるが、企業はそれぞれを適切に行うべきである。不満が解消された外国籍社員の労働意欲の向上は、長期的にはより多くの優秀な外国人留学生の就職にもつながる。
最後に、日本の大学には、留学生に対する高いレベルの日本語教育と、日本人学生の英語力向上を要望したい。
<企業の事例発表>
小平氏の説明に続き、ダイキン工業、東レ、日立製作所、野村證券から、外国人留学生の採用や活用に向けた取り組みと課題、また留学生の受け入れ、教育、就職活動などの面での日本の大学への期待などについて発表があった。
各社からは、優秀な人材を採用するなかで外国人留学生も自然と対象になるといった見解が多く示される一方、就職後の職場における日本語によるコミュニケーションの問題や、日本的な企業文化への適応などが共通の課題として指摘された。
【教育・スポーツ推進本部】