経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会(永易克典委員長)を開催し、公正取引委員会の山田昭典経済取引局長、向井康二官房参事官から、課徴金制度の見直しにかかる「独占禁止法研究会」における検討状況について説明を聞き、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。
■ 課徴金制度見直しの背景
わが国における課徴金制度は、昭和52年の導入以降、3度の法改正が行われたものの、一貫して、法定された算定方式に従い一律かつ画一的に算定・賦課する仕組みである。そのため、国際的な市場分割カルテルをはじめとして、経済活動や企業形態のグローバル化・多様化・複雑化等に必ずしも対応できていない場面が生じている。また、事業者の調査への協力・非協力の程度等を勘案して、公正取引委員会の専門的な判断により課徴金額を決定する仕組みが存在せず、調査協力のインセンティブがないという問題などもある。そこで、今年の2月から「独占禁止法研究会」を開催し、見直しの議論を進めている。
■ 見直しの視点等
当局が事案に応じて、裁量により違反行為に対応した適正な水準の額を決定する仕組みが採用されている諸外国では、上記のような問題は基本的に生じておらず、諸外国の仕組みも参考としつつ、一方でわが国の法体系との整合性等も踏まえ、課徴金制度の見直しを検討する。
見直しにあたっては、比例原則、平等原則、予見可能性・透明性の確保といった行政の一般原則も踏まえる必要があり、また、手続保障のあり方についても考えなければならない。
■ 独占禁止法研究会の論点整理の概要
現行課徴金制度の問題点を解消するため、諸外国の制度も参考にしながら、(1)きめ細かな法改正(法定の算定・賦課方式の要素・要件の追加・削除・見直し)を行う(2)経済・社会の環境の変化に対応するため政令・規則等に委任する(3)公取委の専門的な判断に委ねる――という選択肢があることに留意しつつ検討するというアプローチである。
具体的な論点としては、課徴金の算定基礎(売上額の範囲・売上額の算定期間)、業種別算定率・中小企業算定率を含む課徴金の基本算定率、課徴金の加減算、調査協力インセンティブを高める制度、和解制度、課徴金の賦課方式、刑事罰や民事損害賠償金等との調整、防御権などの手続保障等を挙げている。
■ 今後の検討スケジュール
9月末以降、論点整理で示した各論点の検討に入り、十分な議論を進めたうえで報告書を取りまとめ、必要があれば法制化の作業に入る。
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公取委との意見交換において永易委員長は、個々の事件処理はもちろん、政策形成の場面においても企業と公取委とが対話を積み重ねていくことが、よりよい競争環境の実現のみならず、企業のコンプライアンス推進の観点からも重要であるとしたうえで、予測可能性の高い適切な競争政策を実現してほしいと要請した。
経団連では論点整理を受け、課徴金制度のあり方について、懸案である審査における適正手続の確保とあわせて提言を取りまとめる予定である。
【経済基盤本部】