経団連は5日、東京・大手町の経団連会館で防衛産業委員会(宮永俊一委員長)の2016年度総会を開催した。
総会では、15年度の活動報告および決算等、16年度の活動計画および収支予算が報告されるとともに、役員の改選案が承認された。続いて、防衛省の黒江哲郎事務次官が「わが国の防衛産業政策について」と題して講演を行い、出席委員との間で意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。
■ 防衛生産・技術基盤を取り巻く状況
わが国で防衛装備品生産にかかわる企業の売り上げのうち、防衛需要が占める割合は約5%だ。小規模な企業のなかには防需依存度が50%を超える企業もあるが、全体的には高くない。
近年、防衛装備品の維持整備費が増加傾向にあり、購入費を上回ることが多い。一方、輸入金額は増加傾向にある。防衛予算は限られているので、輸入金額が増えると国産の割合が減少してしまう。国内防衛産業の規模が縮小すると、弱体化して国際競争力が低下し、さらに輸入が増えてしまう。この悪循環を止めなければならない。
■ 装備政策の方向性
装備政策を進めるうえでは、(1)強靭なサプライチェーンの構築(2)イノベーションの促進(3)防衛装備・技術協力の推進――の3点が重要だ。
強靭なサプライチェーンを構築するためには、サプライチェーン全体を可視化して各企業の役割を把握し、代替できない技術や能力を持つキーサプライヤーを特定したうえで、事業撤退による供給途絶や外資による買収などのリスクへの対策を講じなければならない。
イノベーションを促進するうえでは研究開発が重要なカギを握るが、わが国の国防研究開発費は多くない。そうしたなかでも独創的・先進的な技術を活用するために、安全保障技術研究推進制度という新たな制度を昨年度から設けた。これは、防衛省が研究テーマを提示し、解決策を大学・独立行政法人や企業等から公募する仕組みだ。昨年度は約3億円の予算で9件を採択しており、今年度は約6億円の予算を計上している。
海外との防衛装備・技術協力は、14年に策定された防衛装備移転三原則に基づいて進めていく。移転が認められるのは、平和貢献・国際協力の積極的な推進やわが国の安全保障に資する場合等に限定されており、平和国家としての理念を維持しながら、防衛生産・技術基盤の維持・強化、ひいてはわが国の防衛力の向上に資する取り組みだ。
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総会終了後、懇親会が開催され、防衛産業委員会のメンバー、若宮健嗣防衛副大臣、国会議員、政府関係者、有識者など約160名が参加した。
【産業技術本部】