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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年6月30日 No.3276 21世紀政策研究所が第119回シンポジウム開催 -「パリ協定時代のわが国エネルギー・温暖化対策の展望」

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は20日、都内で第119回シンポジウム「パリ協定時代のわが国エネルギー・温暖化対策の展望」を開催した。同シンポジウムは、COP21で採択された「パリ協定」を踏まえて、わが国政府が「地球温暖化対策計画」「エネルギー革新戦略」「エネルギー・環境イノベーション戦略」を決定し、2020年以降の新たな国際枠組みに向けた国内政策が出揃ったことを受けて開催したもの。当日は、有馬純研究主幹(東京大学教授)がモデレーターを務め、政府から、これら計画・戦略の策定に携わった関谷毅史環境省課長、松野大輔資源エネルギー庁室長、岩谷邦明内閣府参事官補佐、産業界からは、手塚宏之経団連環境安全委員会国際環境戦略ワーキング・グループ座長が参加した。

冒頭、関谷氏から、「パリ協定と地球温暖化対策計画」と題して、パリ協定の意義と世界の動き、地球温暖化対策計画、2050年の長期目標を見据えた取り組みについて説明があった。具体的には、5月の伊勢志摩サミットで、パリ協定の2016年中発効と長期の低排出開発戦略の早期策定を目指すことが合意されたこと、地球温暖化対策計画では、日本の約束草案で示した2030年26%削減の実現に向けて個々の対策の評価指標を設定し着実に推進していくこと、長期目標を見据えて長期低炭素ビジョンの策定に取り組むことなどが紹介された。

次に、松野氏から、「エネルギー革新戦略」と題して、中小企業・住宅・運輸の各分野における省エネの強化をはじめとする徹底した省エネ、ならびに固定価格買取制度(FIT)の見直し、新たなエネルギーシステムの構築としてのネガワット取引市場の創設等に向けた考え方が説明された。

続いて、岩谷氏からは、「エネルギー・環境イノベーション戦略」と題して、2050年を見据え、削減ポテンシャル・インパクトが大きい有望な革新技術の特定とその研究開発体制の強化に向けた方策が説明された。また、クリーン・エネルギー分野の研究開発強化に関する国際イニシアティブ「ミッション・イノベーション」へ参加し、今後5年間で研究開発費を倍増する計画を表明したことも説明された。

■ パネルディスカッション

パネルディスカッションの冒頭では、産業界からの声として手塚座長から、「中期的には、業務・家庭部門での40%の削減が大きな課題であるが、既存ストックの省エネに向けた抜本的な更新投資の呼び込みには、環境政策だけではなく経済成長戦略とのリンクが大きなテーマとなる。また、長期的には、イノベーション戦略の加速が重要である」とのコメントがあった。

続く議論では、中期的な視点から、エネルギーミックスの実現に向けた原子力の位置づけに加え、業務・家庭部門での削減のための国民運動(COOL CHOICE)、カーボンプライシング等について意見交換が行われた。一方、長期的な視点からは、2050年80%削減が地球温暖化対策計画で長期目標とされた背景や80%という数値そのものの意味合い、さらには、イノベーション戦略について掘り下げた議論がなされた。

最後に、手塚座長から、石炭・石油が潤沢に入手できてもあえて使わない社会をつくるには、化石燃料よりも魅力的な低炭素のエネルギーソリューションを提示できるようなイノベーションが必要との見解が示された。

同研究所では、「パリ協定」により幕を開けた地球温暖化対策の新たな時代におけるわが国のエネルギー・温暖化対策の課題について、今後も検討を進め、セミナーなどを通じて積極的に情報発信する予定である。

【21世紀政策研究所】

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