経団連の榊原定征会長は27日、東京・大手町の経団連会館で記者会見を行った。
榊原会長は、英国民のEU離脱の選択について、力強さを欠く世界経済の先行きに対する不透明感や不確実性を増大させるとして、深刻に受け止めていると述べた。今回の結果が、短期的には英国経済はもとより、日本を含む世界経済を引き下げるとの予測に触れながら、(1)経済、政治、安全保障、テロ対策など広範な分野への影響が懸念されること(2)EUの存立基盤に対する不透明感も惹起すること――等の懸念が存在するとした。
また、今回の背景にあるナショナリズム、保護主義、孤立主義などのグローバル化に逆行する動きが、国際社会へ伝播する可能性に言及。これを最小化しなければならないと述べた。また、金融資本市場の動揺を早期に収拾し、リーマンショックのような危機を回避することが最優先課題として、市場関係者に冷静な対応を求めた。加えて市場の鎮静化のためにも、政府・日銀による適時適切な対応やメッセージの発信に対する期待を示した。
さらに、円高・株安等の不安材料の長期化、企業業績の低下、投資減少によって、企業経営が慎重になることや、個人消費の節約志向が強まることに懸念を表明。こうした課題の解決に取り組むべく、秋に予定される経済対策を大胆かつ大規模に実行し、政府・経済界を挙げて対応する必要があるとした。
1000社超を数える英国に進出している日系企業について、英国がEUの一員であることを前提に投資先として選択した結果であると述べ、離脱に向けた今後の交渉は不透明であるものの、事態の推移によっては、日本企業のグローバル戦略の再構築、見直しが必要となることを示唆。日本企業の対英投資を維持するためにも、交渉を通じ、英国の国際競争力・事業環境が維持されることに期待を示した。
また、世界が目指すべきは、自由貿易のもとでのグローバル化であり、これは企業にとっても、成長のための大きな前提となっており、最も重要な要素であると強調。G7が築いてきた自由貿易体制という成長と繁栄のメカニズムを維持するべきとした。
さらに、格差や移民などの問題を背景とした、ナショナリズム、孤立主義、保護主義の台頭に対し、G7が連携して対応していく必要があると述べ、G7の議長国として安倍総理、日本政府のリーダーシップによって、こうした動きの伝播を断ち切っていくことに対する期待を示した。
わが国にとって今回の英国の選択は、2020年のPB黒字化とGDP600兆円経済の実現という高い目標に向けて、挑戦していこうという矢先の事態であり、大きな不安定要因となっていると指摘。その影響を最小化するのが喫緊の課題であり、官民を挙げて取り組んでいくことが重要であると述べた。
そのうえで、今後の優先政策事項として、かねてからの重要課題である社会保障制度改革については、これを先送りしてはならないとあらためて強調。子育てや介護の問題に優先的に取り組み、将来不安を軽減していくことが求められていると指摘した。また、GDP600兆円経済の実現について、これは至上命題であり、名目3%、実質2%の経済成長に向けて、日本再興戦略に盛り込まれた「官民戦略プロジェクト10」をしっかり実行していくとの決意を示した。
【広報本部】