経団連は17日、報告書「ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる現状・課題と取組み」を公表した。
同報告書は、労働力人口が減少するなかで、今後増加が見込まれるホワイトカラーの高齢社員(60~65歳)の活躍に向けた効果的な取り組みを20社に及ぶ企業事例をもとに取りまとめたものである。
全体は2部構成となっており、第1部では、ホワイトカラー高齢社員の活躍推進に焦点を当てる理由を示したうえで、取り組みの方向性と実例を紹介。第2部では、詳細な企業事例と経団連が実施した調査結果の概要を収めている。第1部の主な内容は次のとおり。
■ 対象とする高齢社員
高齢者雇用は、継続雇用を中心に進展しているところであり、今後はホワイトカラーの割合が高まると見込まれる。そこで同報告書では、継続雇用のホワイトカラー高齢社員に対象を絞っている。
■ ホワイトカラー高齢社員の現状
経団連の調査では、ホワイトカラーの人員構成について、特定の年齢層が厚い企業が多く、40代前半から50代前半が厚い企業は全体の6割を占めたほか、30代後半層がへこみ、歪んでいるケースもみられた。
また、ホワイトカラー高齢社員への期待については、「専門能力の発揮」、「後進の指導」の順に高く、「定年前と同様の職務の遂行」は低い回答割合となった。
活躍に向けた課題は再雇用後だけではなく、50代後半を含めた意欲の低下である。さらに、今後生じる可能性のある問題として、「職務やポストの不足」に最も多くの回答が集まった。
■ ホワイトカラー高齢社員の活躍に向けた課題
検討を通じて、ホワイトカラー高齢社員には、スキルや能力を活かせる職場での活躍や技能継承を期待する一方、定年前と同じ働きぶりだけでは、戦力として期待するレベルに達しないことから、定年前からの支援を含めた施策の検討が必要であることがわかった。
活躍に向けた課題は大きく2つある。1つは「定年前からの意欲の維持・向上」であり、役職定年や再雇用後の意欲低下への対応、50代後半の処遇低下への納得性の確保が重要となる。
もう1つは社内外における活躍の場の確保である。定年時と同じ職場だけでなく、社外も含めた選択肢の検討が欠かせない。
■ 活躍に向けた3つの柱
活躍推進に向けた取り組みには、3つの柱がある。
第1の柱は意欲の維持向上策である。意識改革の面では、定年前後の役割の変化や、縮小に対応できる心構えを定年前の早い段階から身につけられるよう支援することがポイントとなる。そこで、継続雇用に向けた準備段階である55~59歳の「接続期」における研修や面談において、キャリアの棚卸しや必要となる情報の提供を行うことなどの取り組みを紹介している。
処遇面では、仕事・役割・貢献度に応じた処遇の徹底に向け役職定年制を廃止した事例のほか、高齢期の処遇を複線型にした事例などを収録した。
第2の柱は「高齢期」における活躍の場の拡大である。社内については、事業運営の要請と職場ニーズを踏まえながら多様な働き方を実現することが重要となり、専門的・基幹的な業務への配置のほか、健康状態などの個人差の拡大に配慮した多様な勤務形態の整備などの事例を登載した。
社外については、転進先の開拓と維持に向けたフォローアップに加えて、転進する社員の不安の解消が大切である。そこで、担当者による転進先の開拓方法や、転進経験者を通じて社外転進のイメージを変えていく取り組みを紹介している。
第3の柱は社内体制整備と職場風土の醸成である。高齢社員の活躍に向けた施策を効果的に実施するためには、専門部署の設置やトップメッセージの発信が重要となることなどを記述している。
経団連では、高齢者の活躍推進に取り組む多くの企業の参考となるよう、多様な事例を豊富に収録した同報告書の周知を積極的に図っていく予定である。
※報告書の全文は経団連のウェブサイトに掲載
【労働政策本部】