経団連の社会基盤強化委員会(山内隆司委員長、川合正矩委員長、橋本孝之委員長)は13日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、和泉洋人内閣総理大臣補佐官・内閣官房国土強靱化室長代理から、政府における国土強靱化に向けた最近の取り組みと防災関連を含むインフラシステム輸出について聞くとともに、意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。
(1)国土強靱化に向けた最近の取り組み
国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)とは、ハード・ソフトの両面で、平時から大規模自然災害等に対する備えとして「事前対策」を行うことである。首都直下地震等において多数の人的・経済被害が生じると見込まれているが、建築物の耐震化が進めば、大幅に減らすことが可能である。
国土強靱化に向けた取り組みへの関心は世界各国で広まっている。とりわけ昨年の国連総会で、わが国の提唱により「11月5日を『世界津波の日』として制定する決議」が採択された。このように、今後わが国がイニシアティブを発揮し、世界の津波防災対策の強化、国土強靱化に向けた取り組みを推進していきたい。
さらなる国土強靱化に向けては、民間企業・団体の取り組みが重要なカギとなる。そのため、政府では、民間企業・団体による国土強靱化の先導的な取り組みをまとめた「民間の取組事例集」を公表し、また、企業のサプライチェーン寸断を回避するため、地方ブロックごとに、各輸送モードの相互の連結と、個別企業、グループ、業界BCP/BCMとの相互連携を図る「地方強靱化BCP(仮称)」の作成に向けた取り組みを推進している。また、企業等の国土強靱化に向けた取り組みを後押しするため、「国土強靱化貢献団体」認証制度を今年4月より創設した。引き続き国民運動として、国土強靱化を推し進めていきたい。
(2)防災に関連するインフラシステム輸出
現在、世界で膨大なインフラ需要が生じておりアジア開発銀行の推計によると、2010年から20年までのアジアのインフラ需要は約960兆円と見込まれている。今後この膨大な需要を取り込み、相手国の開発とわが国の経済成長を実現していくことが重要である。
そのため政府では13年3月、安倍総理の指示のもと、インフラシステム輸出の指令塔として「経協インフラ戦略会議」を立ち上げ、20年にインフラシステム受注額を約30兆円にする目標を掲げた。この達成に向け、総理や閣僚等による精力的なトップセールスを展開しており、昨年10月の安倍総理の中央アジア歴訪の際には、5カ国で約3兆円のビジネスチャンスが創出された。また、ミャンマーやインド等で重要プロジェクトが成果を挙げる等、目標達成に向け着実に実績を挙げてきている。そのほか、防災分野の二国間協力関係を強化する「防災協働対話」等を通じ、わが国の防災に関する技術や知見を活かしたインフラシステム輸出も進めている。
今後、さらなるインフラシステム輸出の拡大に向けて、(1)「質の高いインフラパートナーシップ」およびそのさらなる具体策(2)現地インフラ事業に携わる人材育成(3)過去の案件から得られた教訓等の共有と活用(4)戦略的な対外広報戦略――等を中心に、引き続き取り組んでいきたい。
【政治・社会本部】