経団連は19日、提言「今後の教育改革に関する基本的考え方―第3期教育振興基本計画の策定に向けて」を公表した。同提言は、今年4月18日に中央教育審議会(中教審)に対し、政府の教育政策に関する総合計画である「第3期教育振興基本計画(2018~22年度)」の検討・策定が諮問されたことを踏まえ、同計画の策定に向けた産業界の問題意識や考え方を整理したものである。
■ 次世代を担う人材に求められる素質・能力
提言ではまず、次世代を担う人材が備えるべき素質や能力を整理した。わが国が直面する少子高齢化、グローバル競争の激化や「Society 5.0」と呼ばれる急激な社会・産業構造の変化に対応するためには、質の高い教育を通じて変化に主体的に対応できる人材を育成する必要がある。具体的には、課題発見・解決能力やリベラル・アーツ、外国語によるコミュニケーション能力、情報を課題解決のために使いこなす「情報活用能力」などが必要と指摘した。
■ 求められる教育改革
続いて「教育振興基本計画」に沿って、求められる教育改革全般について整理した。
学習指導要領の改訂については、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」の3つの視点から、教育カリキュラムや学習・指導法を抜本的に見直している点を評価した。特に、グループ・ワークやディベートなど、他者との協働作業や児童・生徒による能動的学習を取り入れた学習・指導法である「アクティブ・ラーニング」を初等中等教育から導入し、大学教育に至るまで一貫した取り組みとしたことを評価した。
教育内容の見直しについては、初等中等教育段階における英語力の強化とICT活用による教育イノベーションを求めた。まず英語力の強化について、次世代を担う人材には、英語で積極的にコミュニケーションを図ることが求められるが、日本人生徒の英語力は、現計画で政府が定めた目標にも達していない。まずは、現計画の目標を達成すること、成果を挙げている「語学指導等を行う外国人青年招致事業(JETプログラム)」を拡充し、彼らを含む外部人材に教員の「特別免許」(注1)を付与することで、児童・生徒に生きた英語を教えることも推進するよう訴えた。
ICTを活用した教育イノベーションについては、アクティブ・ラーニングの視点に立った学習には、ICT機器を効果的に活用する必要があることを指摘。社会全体にICTが普及するなか、学校現場だけが取り残されている現状は問題であり、公教育を支える基盤であるICTのインフラ整備や、広く展開するためのモデル・ケースの作成は国が主導すべきであると訴えた。
■ 教員養成の課題
またアクティブ・ラーニングの推進などの新たな教育課題に対応するには、教員の養成課程や選抜方法を抜本的に見直すことが不可欠である。その一環として、教員以外に専門的知見を有する専門職員を学校に配置し、さまざまな業務を教員と分担する「チーム学校」を推進し、世界一多忙とされる日本の教員が、教育活動に専念できる環境を整備するよう求めた。
最後に、次世代を担う人材育成には企業も積極的に貢献する必要があり、企業の教育支援活動のさらなる推進を求めた。経団連としても、経団連ウェブサイトに掲載している教育支援ポータルサイト(注2)などを活用し、企業の支援を社会や学校に「見える化」していく。
(注1)特別免許=特別な専門的知識等を有する社会人を学校の教員として活用するため、都道府県の教育委員会が付与する免許
※提言の詳細は経団連ウェブサイトに掲載
【教育・スポーツ推進本部】