経団連は8日、東京・大手町の経団連会館で起業・中堅企業活性化委員会人材活躍推進部会(立石文雄部会長)を開催した。今回の会合では、中堅・中小企業のダイバーシティ推進をテーマとした検討の最終回として、立石委員長・部会長から、「オムロンの企業理念経営」と題する講演を聞いた。その後、同部会の委員企業等の取り組みを収録した「ダイバーシティ促進に向けた取組み事例集」を取りまとめた。
講演の概要は次のとおり。
■ 「社憲」の誕生と企業理念の制定
ダイバーシティ経営の推進に重要なことは、経営トップ層の想いを社員に浸透させ、同じ方向を向いて進むことである。そのため、オムロンでは企業理念経営を推進している。
企業理念は1959年に制定した社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」がベースとなっている。
社憲制定の背景には、創業者の立石一真が労働争議を経験し、労使関係の安定が大切であると実感したこと、米国視察を通じて、経済発展の源泉としてのフロンティア精神や星条旗のもとに集う精神を体感したこと、セミナー等で企業の公器性の重要性を認識したことがあった。
企業理念は90年に立石電機からオムロンへ社名変更した際に社憲の精神を反映して制定した。その後、3回の改定を経て、現在はOur Mission(社憲)とOur Values(私たちが大切にする価値観)で構成している。Our Valuesには、「ソーシャルニーズの創造」「絶えざるチャレンジ」「人間性の尊重」の3つを掲げている。
■ 企業理念の実践
企業理念経営の実践例として、40年以上前から取り組んでいる障がい者の雇用・支援がある。72年のオムロン太陽設立の際には、東京パラリンピック日本代表団長を務めた中村裕氏から、障がい者が働ける場所の確保に向けた要請があり、多くの企業が断るなかで、創業者が社憲に基づいて設立を決断した。
85年に設立したオムロン京都太陽とあわせて、現在約320名が働いており、このうち75%は身体障がい者である。
■ 企業理念の浸透に向けた取り組み
06年5月に、求心力を創業者や創業家ではなく、企業理念に置くことを宣言して以来、その浸透に向けた取り組みを強化している。私自身も13年6月の会長就任以来、海外子会社の幹部を対象に「企業理念ダイアログ」として、ソーシャルニーズの創造やチャレンジ精神の醸成に焦点を当てたワークショップを毎年開催している。
社員への浸透に向けては、TOGA(The Omron Global Award)を実施している。12年度から全世界約3万5000人(当時)の社員を対象にコンテスト形式で実施しているこの活動では、社員が挑戦するテーマをチーム単位でエントリーする。評価にあたっては、結果だけでなく、プロセスを重視し、「できませんと云うな」等、創業者の言葉に基づいた挑戦が重要な評価要素となる。15年度は4173のテーマに延べ3万8100人が参加した。最終選考を勝ち抜いた13チームの取り組みは、小冊子にして全社員に配布している。
オムロンでは、今後も企業理念の浸透に積極的に取り組み、よりよい社会づくりに貢献していきたいと考えている。
【労働政策本部】