経団連は2月19日、都内で経済法規委員会競争法部会(川田順一部会長)を開催し、公正取引委員会の松尾勝経済取引局長、片桐一幸審査局管理企画課長、向井康二官房参事官、小室尚彦経済取引局企画室長から独占禁止法をめぐる最新の動向について説明を聞き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 「独占禁止法審査手続に関する指針」の公表
公正取引委員会(以下、公取委)は昨年12月25日、独占禁止法違反被疑事件の行政調査手続の適正性を確保する観点から、調査に携わる職員に向けたガイダンスとして、「独占禁止法審査手続に関する指針」を策定・公表した。
指針では、これまでの実務を踏まえ、行政調査権限の根拠や法的性格、行政調査手続の標準的な実施手順や留意事項等を明確化した。これにあわせて、事業者等向け説明資料も策定・公表している。
また、行政調査手続のうちの任意の供述聴取については、指針に反する審査官等の言動等に対する苦情申立制度を導入した。
指針については、公表後2年を経過した後、同指針に基づく事件調査のフォローアップを実施し、関連する法制度の状況等を踏まえながら、事業者の防御権についての検討を含め、必要に応じて見直しを行うこととしている。
■ 確約手続の導入に向けた検討状況
昨年10月に大筋合意に至ったTPP(環太平洋パートナーシップ)協定への対応として、独占禁止法違反の疑いについて、公取委と事業者との間の合意により解決する仕組み(確約手続)を導入する。これにより、事業者は自主的に違反を疑われた行為を解消することで、公取委の調査への対応コストを節約し、法違反であると認定されないことが可能となる。
具体的には、公取委から独占禁止法の規定に違反する疑いのある行為の概要等の通知を受けた事業者が、競争状態を回復するために自ら採るべき措置(排除措置計画)を自主的に作成・申請し、公取委がこれを認定した場合には排除措置命令等の処分を行わないといった仕組みを検討している。
公取委と事業者は、競争状態の改善に向けコミュニケーションを取りながら手続全体を進めていくことになる。運用については検討中であるが、確約手続中は、公取委は通常の審査は行わないことなどを想定している。
制度の導入にあたって必要な独占禁止法の改正法案は、TPP協定の国内担保法の1つとして、他の法律の改正法案と一緒に国会に提出される見込みである。
■ 課徴金制度の見直しにかかる独占禁止法研究会の開催
裁量型課徴金制度を含む課徴金制度のあり方について検討を行うため、2月から公取委で「独占禁止法研究会」を開催する。公取委としては、事業者の経済活動や企業形態のグローバル化をはじめとした経済・社会環境の変化への対応、諸外国にみられるような事業者による調査協力のインセンティブを高める制度の導入、制度の国際的整合性の向上が必要であると考えている。
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会合の最後に、川田部会長は、企業と当局とが対話を積み重ねることは、事件処理のみならず企業のコンプライアンスの推進という観点からも重要としたうえで、確約手続や課徴金制度など制度面での議論を進めるにあたっては、手続面の課題も念頭において、わが国の競争政策をバランスの取れた予測可能性の高いものにしてほしいと締めくくった。
【経済基盤本部】