経団連(榊原定征会長)は提言「産学官連携による共同研究の強化に向けて~イノベーションを担う大学・研究開発法人への期待」を取りまとめ、16日に公表した。
昨今の「第4次産業革命」に代表されるグローバルな構造変革のもと、わが国の企業にとっては既存の事業領域を超えた革新領域の競争力強化が急務であり、そのためには基礎研究・応用研究および人文系・理工系等の幅広いリソースを持つ国立大学・国立研究開発法人との「オープンイノベーション」の加速が重要といえる。
これらを踏まえ経団連は、産学官連携による「本格的な共同研究」の強化に向けて、国立大学・国立研究開発法人に求める改革、および政府・産業界が果たすべき役割について提言した。
■ 産学官連携のあるべき姿
現在、わが国の産学官連携による研究成果の事業化率は16%、産学共同研究の金額規模は平均231万円にとどまるなど、その取り組みは概して低調と指摘される。今後はそのような状況を打破し、企業と大学・研究開発法人が将来のビジョンを共有し、基礎研究・応用研究および人文系・理工系を問わずリソースを結集させてイノベーションを加速する「本格的な共同研究」を進めることが重要である。なお、経団連未来産業・技術委員会が実施した調査によると、9割を超える企業が本格的な共同研究に対して高い期待を示している。
■ 大学・研究開発法人、政府への期待
「本格的な共同研究」を進めるためには、企業・大学・研究開発法人内の部局および各主体の壁を越えた組織的な連携体制の構築が重要といえる。そのためには、大学・研究開発法人には、トップのリーダーシップに基づく「本部・マネジメント機能の強化」を進め、大型の産学官連携を牽引できる体制を構築することが求められる。加えて財源の多様化を進め、将来に向けた教育・研究の質を高める資金を自ら捻出・投資するための「財務構造改革」を進めることも重要である。
また、政府においては、共同研究の強化が財務基盤の弱体化や教育・研究の質の低下を招かないためのシステム改善と、産学官連携が加速する強力なインセンティブシステムの設計が必要である。
■ 産業界・経団連の取り組み
産業界としては、わが国の大学・研究開発法人が欧米に匹敵する組織的な体制を構築できた場合、大学・研究開発法人に対する「投資」や「知・人材の交流」の拡大を図る。また企業間での連携が有効である「協調領域(非競争領域)」の研究開発については、迅速な産業育成に向けて積極的な産学官連携・共同研究を推進する。
加えて、共同研究成果の活用における選択肢を広げるため、経団連としても東京大学との間で共同研究成果を生かしたベンチャー企業の創出に向けて会議体を設置するなど、具体的な検討を進める。
※提言の全文は経団連ウェブサイトに掲載
【産業技術本部】