経団連は1月13日、東京・大手町の経団連会館で海洋開発推進委員会総合部会(長澤仁志部会長)を開催した。北海道大学の川端和重理事・副学長、齊藤誠一北極域研究センター長、田中晋吾URAステーション主任URA、末富弘産学・地域協働推進機構特任教授を招き、北極域研究センターの取り組みについて説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ センター設置の意義=川端氏
北海道大学は、世界の課題解決への貢献を基本理念に掲げている。そこで、産学連携を組織的に進めるなかで、北極域研究センターを設置した。
北極の氷が急激に解けて、地球温暖化が進んでいる。これは資源開発、水産資源利用、観光利用、環境保全などの面で、人間の生活に影響を与える。近年、北極海では海氷域面積が減少し、夏期の航行が可能になった。北海道からヨーロッパを結ぶと、スエズ運河を経由するルートと比べて航行距離は約6割に短縮される。
北極海に関する国際的な枠組みとして北極評議会があり、日本はオブザーバーとして参加している。昨年10月に、政府は「我が国の北極政策」を決定し、研究開発、国際協力、持続的な利用に取り組むこととした。
■ 北極域研究の取り組みと成果=齊藤氏
昨年4月に設置された北極域研究センターは、国立極地研究所や海洋研究開発機構との連携のもと、北極域の持続可能な開発・利用・保全の推進をビジョンに掲げている。北大の自然科学や人文社会科学の分野を融合させて、北極域の研究を進めている。
北大は北極域における拠点を展開しており、現在、フィンランドのヘルシンキにオフィスがある。加えて、ロシアのウラジオストクなど3カ所の拠点設置を計画している。海外拠点では産学官のステークホルダーや人材育成に関する情報収集を行う。また、北極域ではロシアによる石油・ガスの開発が進んでおり、日本企業も進出している。
北極域研究の成果としては、北極海航路の海氷の短中期的な予測、温度上昇やCO2濃度の変化に対するプランクトンの動向などを予測して水産資源の利用に役立てることなどがある。
【産業技術本部】