経団連は12月21日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会企業会計部会(野崎邦夫部会長)を開催し、国際会計基準審議会(IASB)のハンス・フーガーホースト議長から、国際会計基準(IFRS)の開発動向を聞き、意見交換を行った。その後、IASB「アジェンダ協議2015」の公開草案に対する経団連のコメントを審議し、了承された。
フーガーホースト議長は冒頭、「日本において、IFRSが信頼され、適用が拡大していることをうれしく思う」「一方、『のれん』の会計処理が日本におけるIFRS適用の障害になっていることはよくわかっている」と述べたうえで、IFRSの開発動向について、次のとおり説明した。
(1)リース
1月13日に新基準を公表する。日本では、コスト・ベネフィットが問題になっていることは承知しており、実務への影響を分析した文書も公表する。
(2)保険契約
これまで12年にわたって議論を尽くしてきた。早々に最終基準化するため、日本の意見も聞きながらドラフト作業に移る。適用は早くても2020年か21年の予定。
(3)開示イニシアティブ
IAS1号「財務諸表の表示」を改訂して、「作成者にとって重要ではない開示は不要である(開示してはならない)」と明確に記載する。また、3月に「開示原則」の討議資料を公表し、規則主義ではなく原則主義での開示要求となるよう工夫する。過去の開示要求もチェックし、開示目的が不明瞭なものはないか精査する。直接法キャッシュフローの議論は行わない。
(4)のれんの会計処理
のれんの会計処理は、米国財務会計基準審議会(FASB)とのコンバージェンスが重要である。償却か非償却かで齟齬が生じてはいけない。IASBにおいて、会計基準アドバイザリーフォーラム(ASAF)に参加する国のなかでも償却か非償却かで意見が割れている。すでに必要な議論は尽くされているので、理論的・実務的にどちらが正しいのか、一歩立ち止まって考え、近い将来結論を出す。議長としても責任を感じており、新年の誓いとする。
(5)概念フレームワーク
概念フレームワークは、公開草案ですべてが解決していない。その他の包括利益(OCI)と純利益の使い分けの問題を明確化する必要がある。本来、会社の存続にとって重要な項目は純損益に計上すべきであり、保険や年金の割引率の変動をOCIに計上することには疑問がある。
<意見交換>
経団連からは、(1)のれんの会計処理は償却処理を復活させることを前提に、速やかに基準開発を行うべき(2)概念フレームワークの公開草案は、純利益概念の整理、資産・負債の認識規準など不十分な点が多く、今後、市場関係者が納得するまで議論を尽くすべき――といった点を強調し要望した。
また委員から、のれんの償却処理を求める意見が相次いだほか「以前頓挫した『基本財務諸表』プロジェクトを続けるべきではない」「『保険契約』はまだ実務上の課題があり、引き続き議論させてほしい」といった意見が出された。
【経済基盤本部】