経団連は12月17日、東京・大手町の経団連会館でヨーロッパ地域委員会(佐藤義雄委員長、石塚博昭委員長)を開催し、外務省の長嶺安政外務審議官、経済産業省の赤石浩一通商政策局審議官から説明を聞いた。
説明の概要は次のとおり。
■ 長嶺外務審議官説明=日EU経済連携協定(EPA)交渉
日EU EPAについては2015年内の大筋合意を目指して交渉を進めてきたが、11月の第14回交渉会合では合意実現には至らなかった。今後は、G20アンタルヤ・サミットの際に行われた日EU首脳会談での合意に沿って、16年のできる限り早い時期の実現に向けて交渉をさらに加速していく。EU側には、先般大筋合意したTPP(環太平洋パートナーシップ)の幅広い意義を説明しつつ、日EU間においても、日EU EPAを通じて経済にとどまらない広範な関係強化を実現していくよう呼びかけている。新しい世界標準をつくることを視野に取り組む同交渉のポイントは次のとおり。
(1)物品市場アクセス=日本はEUの鉱工業品等の高関税撤廃(乗用車10%、電子機器14%)に、EUは日本の農産品等の市場アクセスに関心あり。
(2)非関税措置(NTM)=日本は個人情報の越境移転にかかる規制等の問題の改善を提示しつつ、EUが要望する自動車、食品安全、医療機器等にかかるNTMに対応。全般的に進捗あり。
(3)政府調達=EUの関心が強い鉄道分野を含め、相互の市場アクセス改善のための交渉を推進。
(4)地理的表示(GI)=EUは強い関心あり。日本にとっても日本産品の輸出促進のチャンスであり、日本側GIの国際的保護の確立を追求。
■ 赤石通商政策局審議官説明=日EU経済を取り巻く環境
急増する難民の流入やテロ事件を受け、欧州情勢は非常に大きく動いており、日EU経済やEPA交渉に与える影響を注視している。
欧州国境・沿岸警備隊創設の提案やシェンゲン協定の見直し、さらにはEUがこれまで極めて重視してきた個人データ保護の規制について安全保障の観点から情報流通を進める議論などがある。また、政治情勢として、スペイン等の選挙の動向や英国のEU離脱問題について注視している。
経済情勢としては、ユーロ安などの後押しで引き続きプラス成長となる見込みであるが、欧州中央銀行の金融緩和施策やEUの新投資計画の動向を注視している。総額3150億ユーロの新投資計画は日本からEUへのよい参入機会となるが、中国が資金拠出することで合意するなど、EUと中国との結びつきが強まっていることを踏まえて対応することが重要である。
欧州委員会が10月に発表した新通商政策では日EU EPAは戦略的優先事項に位置づけられており、交渉を積極的に進めていく。
日EU規制協力については、関税以上に重要なファクターが多くある。経団連の提言も追い風となっており、産業界に後押ししていただくことが非常に重要だ。米欧間でも具体的な規制協力の議論が進められており、日米欧の間で規制協力を進めていきたいと考えている。
【国際経済本部】