経団連の榊原定征会長は12日、東京・大手町の経団連会館で記者会見を行った。
経済情勢について、年明け以降の株式市場の下落の背景として「中国経済の減速懸念」「不安定な中東情勢」「北朝鮮の核実験」の3つの外的要因を挙げたうえで、経済のグローバル化が進み、投資資金が国境を越えて大きく移動する時代において、海外の情勢が日本の株式市場に影響するのは仕方がないものの、今の株式市場の状況は完全に過剰反応であると指摘。中長期的には日本経済のファンダメンタルズは強く、企業の業績も好調であることから、市場が冷静さを取り戻せば、株価は落ち着くべき水準に落ち着くとの認識を示した。そのうえで、今後は日本の株価もきちんと評価され、2万円台を回復し、さらに上値も期待できる、それが日本経済の本当の力であるとした。
中国経済については、製造業PMI(購買担当者景気指数)が50を下回ったとはいえ、GDPの過半を占める非製造業のPMIは50を上回っており、景気に波はあろうとも、不安視する状況ではないと指摘。中東情勢についても、予断を許さない状況ではあるが、米国とロシアが仲裁に乗り出す姿勢をみせており、落ち着くところに落ち着くとの見解を示した。
また、原油安についても、業種業態によりプラスとマイナスの双方の影響があるが、原材料価格の低下により企業の競争力が増し、個人消費も喚起されることから、日本全体としてはプラスの影響が大きいと指摘した。
春季労使交渉について榊原会長は、経労委報告を通じて、収益を拡大した企業には年収ベースで昨年を上回る賃金引き上げに前向きかつ踏み込んで検討してほしいと呼びかけていくと述べた。そのうえで、一律的な引き上げではなく、選択肢として若年者や子育て世帯への配分を手厚くすることを挙げ、人口減少社会へ対応するためにも、処遇改善を通じたモチベーションを与えることは重要であるとした。このほか、家族手当や住宅手当の見直しの検討、非正規雇用者の正規化と賃金引き上げ、長時間労働の是正をはじめとするワーク・ライフ・バランスの改善などを呼びかけていくとの考えを示した。
さらに、春季労使交渉は労使が真摯かつ冷静に議論する場であり、不測の事態が起きない限り、現在の市場の動向が交渉に直接的な影響をもたらすことはないとの認識を示した。
【広報本部】