経団連の起業・中堅企業活性化委員会(荻田伍委員長、根岸修史委員長、立石文雄委員長)は11月30日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、ペプチドリームの窪田規一社長から、大学発ベンチャー企業の成長に向けた産業界の役割について説明を聞くとともに懇談を行った。
ペプチドリームは、「特殊ペプチド」と呼ばれる物質から優れた医薬品の候補となる物質をスピーディーかつ的確に創製する独自技術を持つ、東京大学発のベンチャー企業である。同社は2006年に創業し、現在は東証1部への上場を果たした。
■ 創薬バイオベンチャー成功への道のり
窪田氏は、同社躍進の理由について、高い技術力に加え、優位性の高いビジネスモデル、特許の戦略的な取得、優秀な経営人材の確保、大企業との契約方法の工夫など、「創薬」ベンチャー企業特有の高いリスクを克服するための取り組みを多数進めた結果であると分析した。また、技術開発を行った東京大学の菅裕明教授は共同創業者ではあるが、経営には深く関与せず、経営を「経営者に任せる」ことで技術開発をスピーディーに進める工夫をしていると述べた。
■ 求められる大企業との連携
また「ベンチャー企業では、ヒト・モノ・カネ、すべてが不足しており、そのなかでは、大企業からのあらゆる支援・連携が極めて大切」「特に、投資のみならず経営全般を幅広く支援する『ハンズオン』が重要」との考え方を示した。加えてオープンイノベーションを進めるにあたり、ベンチャー企業と連携する大企業は約5%にとどまると述べたうえで、今後はこれを高め、さまざまなリソースを蓄積している大企業がベンチャー企業との間で投資、経営、調達、人材交流などの幅広い「ハンズオン」の連携を深めることが重要であると指摘した。こうした連携により、ベンチャー企業は事業の安定成長に向けたパートナーを得ることができ、大企業もベンチャー企業とともに新事業の創出を実現できると強調した。
<意見交換>
意見交換では、同じく東京大学発ベンチャー企業の一つであるユーグレナの出雲充社長が、大企業によるベンチャー企業からの「調達」の重要性について、売上の増大に加え、ベンチャー企業が幅広い企業から信頼を得る実績づくりとして大きな意味を持つと述べた。会合では、今後大企業が、ベンチャー企業を対等なパートナーとしてとらえ、投資、調達そして技術交流等の連携推進に向けたさまざまな取り組みを加速することが必要との認識が共有された。
【産業技術本部】