経団連は12月15日、提言「投資協定等の締結加速を求める」を公表した。グローバル化を背景に、国際投資がわが国と世界の経済成長に果たす役割の重要性が一層高まるなか、世界で外国投資保護のための二国間投資協定等の締結が拡大している。しかしながら、わが国による取り組みは経済界が期待するスピードでは進んでおらず、諸外国に大きく劣後している(図表1参照)。わが国が海外展開を推進するインフラ投資を受入国で法的に確実に保護するためにも、わが国にとって重要な相手国・地域(図表2参照)との間で質の高い投資協定等の締結を加速する必要がある。
■ 協定に盛り込むべき内容
協定に盛り込むべき主な内容は次のとおり。
投資仲裁(ISDS)=政府が投資協定の義務に違反した結果投資家に損害が発生した場合、投資家が投資先政府に仲裁を提起し補償を受けることを可能とする制度
投資の保護・自由化=外国投資に対する衡平・公正待遇義務、投資を実施する段階で出資比率の制限や特定の措置の履行要求(物品・サービスの現地調達、自国民雇用、技術移転等)を行わない義務
投資活動の円滑化=法令の公表やパブリックコメント募集の実施義務等を通じた透明性の確保、ロイヤルティを含む送金規制の撤廃、清算・撤退の自由、締約国と投資家の約束を遵守する義務(アンブレラ条項)
ビジネス環境整備=投資協定等を補完するものとして、わが国の経済連携協定(EPA)ですでに活用されている対話の枠組みの設置・活用
■ 留意事項
公平な保護を確保すべく、特定業種に対する適用除外等がないよう、適正な保護範囲を確保する必要性を指摘したうえでISDSについては政府の規制権限を侵害するものではなく、むしろ行政府による差別的・恣意的扱いを防ぐことで外国投資受入の円滑化・経済成長・雇用にも資すると主張した。また、外国投資家に対して適切な保護を与えるという政府の義務について規律する投資協定等の本来の趣旨に鑑み、協定等に企業の社会的責任を規定する必要性は認められないと指摘した。
以上を含め、わが国政府に対し、国際投資の保護の強化・自由化・円滑化を実現する21世紀にふさわしい国際投資ルールづくりを主導することを求めている。本来、世界で3000を超える協定が並存する現状は望ましいものではなく、WTOにおける取り組みを含め、多国間の国際投資ルールの整備を進めるべきとしている。
※提言の全文は経団連ウェブサイトに掲載
【国際経済本部】