経団連は提言「『新たな基幹産業の育成』に資するベンチャー企業の創出・育成に向けて~日本型『ベンチャー・エコシステム』の構築を目指して」を取りまとめ、15日に公表した。
わが国のベンチャー企業を取り巻く状況は、新興企業の数・時価総額、国民意識等のさまざまな面で国際的な水準に遠く及ばない。そこで現在、政府では「日本再興戦略」を受け、グローバル競争力のあるベンチャー企業の創出促進に向けたロードマップ「ベンチャー・チャレンジ2020(仮称)」の検討が進められている。また大企業でも、本格的なオープンイノベーションの取り組みが増えるなか、そのパートナーたるベンチャー企業の重要性が高まっている。これらを踏まえ経団連では、政府に対して米国等に比肩するマスタープランの確立を求める点、および政府・産業界が果たすべき役割に関する提言を取りまとめた。
■ ベンチャー・エコシステムの構築へ
優れたベンチャー企業の安定的な創出・育成には、大企業・大学・ベンチャーキャピタルとベンチャー企業の間で資金・技術・人材を好循環させる、いわゆる「ベンチャー・エコシステム」の構築が不可欠である。
今後はわが国でも、シリコンバレー等にならい、ベンチャー企業に関する幅広い関係者が集う「場」の整備や投資環境の改善、起業家人材の育成などを政府が一丸となって進め、エコシステムの構築を促進していくべきである(図表参照)。
■ 科学技術イノベーション政策との連動
欧米諸国において、ベンチャー企業政策のカギは科学技術イノベーション政策と連動した「切れ目のない支援」である。他方、現状の支援政策は中小企業政策の一環として語られることが多く、イノベーション実現の観点に即した、研究開発と事業化のギャップ「死の谷」を越える支援は少ないことが課題視される。
今後は、科学技術イノベーション政策と連動し、特にIoT(Internet of Things)・AI等の政府研究開発投資の重点分野において切れ目のない支援を行い、研究成果をベンチャー企業による「イノベーション」につなげる政策が重要である。
■ 産業界・経団連の取り組み
ベンチャー企業の創出・育成には、政府による支援に加え、大企業も中心的な役割を果たす必要がある。すでに多くの大企業でベンチャー企業との連携が進むなか、これをさらに強化し、投資のみならず調達・人事交流・技術支援なども含めた一体的な連携を加速させる必要がある。
経団連では、これらに向けた大企業の意識変革を進めるとともに、東京大学との間で「東大・経団連ベンチャー育成会議」を設立して大学発ベンチャーとの連携を強化している。加えて福岡市を始めとする地方自治体連合「スタートアップ都市推進協議会」とも連携を進めている。今後、一層の充実が図られるべき大学発・地方発のベンチャー企業の成長に資する具体的な活動を推進する。
※提言の全文は経団連ウェブサイトに掲載
【産業技術本部】