21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は、会員企業への研究成果のタイムリーな提供を目的にセミナーを随時開催している。その一環として12月に予定される日米財界人会議も視野に11月19日、都内で日米関係をテーマとするセミナーを開催した。講師として同研究所「日米関係に関する研究プロジェクト」の久保文明研究主幹(東京大学教授)、前嶋和弘研究委員(上智大学教授)が出席し、大統領選挙をはじめとするアメリカ政治の最新の情勢を解説した。
最初に、久保研究主幹が、オバマ政権のこれまでを振り返るとともに、ワシントンから見た対日評価について説明した。特に最近の懸念事項である南シナ海へのイージス艦派遣については、予想外の武力衝突には発展しないものの、力による現状変更を認めないというアメリカの姿勢を明確にしたことにより、今後の米中関係を根底から変化させるものだと指摘した。
TPP(環太平洋パートナーシップ)については、経済面や日米関係の重層的な構築に寄与するだけではなく、仮に中国が加入を希望する場合、政策過程の透明性の確保や国営企業改革が不可欠になるなど、戦略的な意義も大きいとした。また、アメリカにおける安倍政権の評価は集団的自衛権をはじめとする政治的成果の積み重ねにより着実に高まっているが、日米安保条約の権利・義務が非対称で日本に一方的に有利であるとアメリカの政治家やメディアが誤解をしている部分も多く、まだまだ日本からの啓蒙が必要であることを訴えた。
次に前嶋研究委員からは、本格化しつつある大統領選挙について、直近の動向と予想も含めた分析が行われた。まず、共和党・民主党の分極化(穏健派の減少)が一層進むなか、上下院とも共和党が多数派を占め、ねじれにより機能しない連邦議会への国民支持は史上最低のレベルにまで落ち込んでいることを指摘。こうした不満がアウトサイダーへの希求を生み、トランプやカーソンといった非政治家への予想外の支持につながっているとした。
また、世論調査での支持率が選挙献金に直結したり、テレビでの候補者討論が「サーカス化」しているなどメディア主導となっている選挙システムの特徴、問題点を具体的に解説した。最後に民主党大本命のヒラリー・クリントンを軸に、想定される共和党候補のシナリオが示された。
なお同研究所では、12月15日に「2016年米国外交と日米関係の展望」と題し、アメリカの外交問題(対アジア戦略、対ロシア戦略)に焦点をあてた会員企業向けセミナーを開催する。
【21世紀政策研究所】