21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)では、内外の学者・研究者など多彩な人材を研究主幹に迎え、経済法制、産業・技術、環境・エネルギー、外交・海外等の広範な領域にわたる研究に取り組んでいる。
シリーズ「地域の活性化策を考える」の第2回は、安藤直人・東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授「個性を活かした木材活用」。同氏は、プロジェクト「森林・林業・木材活用」(2013年度)の研究主幹を務め、報告書「森林大国日本の活路」(15年3月)では、本格的な伐採期を迎えた日本の森林にとって民間の経済活動を通じて木材利用のサイクルを循環させていくことが必要だと主張している。
◆ 本格的な伐採期を迎えた日本の森林
日本は戦後、禿山になった各地の山々に拡大造林施策により、一生懸命木を植えてきました。その過程で、「緑は大切で木を伐ってはいけない」ということが国民全体に刷り込まれました。
戦後70年を経たいま、植林した森林が本格的な伐採期を迎えています。しかし、国産材の伐採、利用に至るサイクルは崩れてしまい、間伐等の森林整備も十分に行われず、森林の質的荒廃が進行しています。こうした足もとの状況を踏まえ、地域資源の代表である森林資源の活用を実現させていくことが地域の活性化につながると思います。
◆ 森林資源の活用
森林の活用は、4つに分けて考えるとわかりやすいと思います。
第1に、植林や間伐など森を守る。第2に、人、機械、路網など木を伐りだすための環境をつくる。第3に、木を加工して使い切る。第4に、こうした事情を国民、企業に広く知ってもらい、国産材の循環サイクルを再構築していく。
特に、木材の加工・消費については、地元の木材を地元で消費する「地産地消」で小さくやっていく方式を切り替えて、加工・生産の現場を集約し、合理化して大消費地で使われるようにすることが活性化のカギになります。
木材の活用が地方を活性化します。これまでは「木の文化」にどっぷりと浸かってきましたが、それにこだわるとマーケットを失います。「木の文化」たる「銘木」は伝統的な日本住宅の建築が少なくなってそのニーズは細っています。これからは、「木の利用のための文明(=技術によって付加価値をつける)」を地方にもたらす必要があります。技術によって雇用をつくり出すことが重要です。
◆ 情報発信
森林資源の活用をめぐる課題は、地域の状況によって異なります。それぞれの地域が足もとの状況をみて何ができるかを考え、オリジナルなものを外に向けて発信していくことで、多くの人に受け取ってもらえます。
私も、こうした分野に若い人にどんどん入ってきてもらいたいと思い、「木づかい運動」の一環として、全国の高校生に講義を通じて森林資源の活用を伝え続けています。日本では、本格的に国産材をつかう時代を迎えたにもかかわらず、誰も「木をつかう」ことを教えていないのです。
【21世紀政策研究所】