経団連は10月26日、東京・大手町の経団連会館で、社会保障委員会医療・介護改革部会(望月篤部会長)を開催した。厚生労働省保険局の渡辺由美子総務課長から、医療政策の課題と今後の方向性について、説明を聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 超高齢社会に対応するための医療提供体制改革
わが国は、今後ますます超高齢社会へと向かうことになるが、医療保険制度の持続可能性を確保していくためには、こうした社会変化に対応できるよう、医療のあり方も含めて見直さなければならない。
例えば、高齢者は疾病の根治が困難であることから、従来の「治す医療」から「治し、支える医療」へと変えていく必要があり、これにあわせて地域の医療提供体制も最適化していくことが求められる。
その方策として、2015年度より、都道府県は「地域医療構想」を策定することとなっている。「地域医療構想」では、医療需要と病床の必要量に関する将来推計とその推計を踏まえた病床再編等の医療提供体制改革の2つが、大きな柱となる。
後者については、各地域の医療関係者の協議を通じて病床再編等を行うことになるため、一見すると遠回りにみえるかもしれない。ただ、その協議はデータに基づいて行うこととしているので、地域の医療関係者からの合意を得つつ、着実に改革を進めることができると考えている。
■ 医療保険制度改革と医療費適正化に向けた取り組み
医療保険制度の持続可能性を確保するためには、医療費の増加を抑制する施策が欠かせない。その一環として、各都道府県が策定する「医療費適正化計画」におけるPDCAサイクルの強化を図った。具体的には、各都道府県に「地域医療構想」と整合的な医療費目標の設定のほか、医療費実績が目標を著しく上回った場合における要因分析と対策の実施が求められることになった。
各保険者が行う加入者の予防・健康管理の取り組みも重要である。レセプトや特定健診等のデータを活用し、加入者の健康状態に応じた効果的な保健指導や、処方薬とジェネリック薬の差額通知など、さまざまな保健事業が展開されることが期待される。
■ 2016年度診療報酬改定
来年度の診療報酬改定においては、医療機能の分化・連携と地域包括ケアの推進が1つの大きなテーマとなる。急性期病床の機能分化を進めるため、前回改定に引き続き、7対1入院基本料の要件のさらなる見直しや、急性期後の受け皿となる地域包括ケア病棟などの評価、回復期リハビリテーションの質の評価など、さまざまな課題があり、現在、中央社会保険医療協議会で議論を進めているところである。
また、調剤報酬についても、患者からみたあるべき医薬分業の姿という観点からの見直しが求められる。重複投薬等を減らし、患者と向き合い、かかりつけ機能を果たしている薬剤師・薬局については評価する一方で、そうでない薬局については報酬を見直すなど、メリハリを効かせた対応が求められていると考える。なお、「骨太方針2015」では、保険給付の範囲や患者負担のあり方について見直しを検討するとされており、今後、社会保障審議会医療保険部会等で検討を進めていく。
【経済政策本部】