経団連は10月21日、東京・大手町の経団連会館で厚生労働省雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課の小林洋子課長を講師として「女性活躍推進法施行に関する説明会」を開催、企業の実務担当者ら約500名が参加した。
女性活躍推進法は8月28日に成立し、9月4日に公布された。同法により、301人以上の労働者を雇用する一般事業主(以下「事業主」)には、来年4月1日の施行までに、自社の女性の活躍状況の把握・課題分析、行動計画の策定・届出・周知・公表、自社の女性の活躍に関する情報公表などが新たに義務づけられる。また、300人以下の企業は努力義務となる。
1.状況把握・課題分析
まず、行動計画を策定・変更するにあたり、事業主は女性の活躍に関する自社の状況を把握し、課題を分析することが必要となる。その際、(1)採用者に占める女性比率(2)勤続年数の男女差(3)各月ごとの労働者の平均残業時間等の労働時間の状況(4)管理職に占める女性比率――の4項目を必ず把握することが求められる。そのほか、事業主が実態に合わせて任意で把握する21項目については、10月中に公布する予定の省令で定められる(*10月28日公布)。
把握項目の(1)(2)とその他の把握項目の大部分は、雇用管理区分ごとに把握しなければならない。また、労働者に占める女性比率、職種/雇用形態転換実績等いくつかの項目については、派遣社員についても派遣先事業主が把握を求められる。
把握した状況をもとに、自社が女性活躍を推進するうえでの課題を分析し、その結果に基づいて行動計画を策定・変更する。課題分析の効果的な手法の例示として、行動計画策定指針を参考にしてほしい。なお、状況把握・課題分析は社内で実施するものである。
2.行動計画の策定・届出・周知・公表
次に、事業主は、状況把握・課題分析の結果を踏まえて、女性の活躍推進に向けた行動計画を策定する。行動計画には、(1)計画期間(2)数値目標(3)取組内容(4)取組の実施時期――を盛り込むことが必須である。(2)の数値目標については、女性管理職比率に限らず、採用者に占める女性比率、男女の継続勤務年数差の縮小割合、労働時間ほか、何らかの数値を用いて定めることとし、各社の実情に見合った水準とすることが重要である。経団連のウェブサイトに掲載されている自主行動計画も参考としてほしい。
行動計画に基づく取り組みの実施と定めた目標の達成については、努力義務が課される。行動計画を策定した旨の届出は、来年4月1日までに都道府県労働局(雇用均等室)に届出をする。届出の受付は来年1月ごろに開始される予定である。あわせて、事業所の見やすい場所への掲示、書面の労働者への配布、または電子メールによる労働者への送信、イントラネットへの掲載等、適切な方法により労働者に周知するとともに、自社ホームページへの掲載などの適切な方法により外部に公表しなければならない。
政府としては、内閣府の女性の活躍に関する「見える化」サイトほか、女性の活躍状況に関する情報を一元的に集約した女性の活躍推進企業データベースを来年2月ごろに厚生労働省のホームページ上に開設する予定である。
3.情報公表
事業主は、女性の職業選択に資するよう、女性活躍に関する情報の公表を義務づけられる。省令で定められる項目のうち、事業主が適切と考える項目を少なくとも1つ公表しなければならない。公表する項目は、行動計画作成の際に状況把握・課題分析した項目から選択することが基本であると考えられるが、他の項目を選択したとしても法律違反にはならない。
省令案には状況把握・課題分析の際に把握した4項目をはじめ、全14項目が列挙されている。この項目のなかから、求職者にアピールするのに適切であると思うものを1つ以上、公表する。必ずしもすべての項目を公表しなければならないものではないが、公表範囲そのものが事業主の女性活躍推進に対する姿勢を表すものとして、求職者の企業選択の要素となることに留意が必要である。一部の項目については雇用管理区分ごとの情報の公表や派遣社員についても、派遣先企業による情報の公表が求められる。
公表内容は、自社ホームページへの掲載などのインターネットの利用その他の適切な方法により、求職者等が容易に閲覧できるようにする。概ね年1回以上、公表時点を明らかにして行わなければならない。まずは来年4月1日までに公表する必要がある。
4.認定
行動計画の届出を行い、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な事業主については、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができる。認定を受けると、認定マークを商品などにつけることができる。
評価項目は、(1)採用(2)継続就業(3)労働時間等の働き方(4)管理職に占める女性比率(5)多様なキャリアコース――の5項目で、認定基準の評価項目を満たす項目数(1つまたは2つ、3つまたは4つ、5つすべて)に応じて3段階の認定がある。認定を受けるには、評価項目の実績を女性活躍推進企業データベースで公表する必要がある。
※当日の配布資料等は経団連ウェブサイトに掲載
【政治・社会本部】