経団連の起業・中堅企業活性化委員会(荻田伍委員長、根岸修史委員長、立石文雄委員長)は9月16日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、東京大学産学連携本部長の渡部俊也教授、同イノベーション推進部長の各務茂夫教授から産学共同でのベンチャー育成などの新たな産学連携の試みについて説明を聞くとともに懇談を行った。
講演の概要は次のとおり。
■ 時価総額1兆円を超えた東大発ベンチャー
東京大学では、研究者を対象としたアントレプレナーシップ教育やベンチャーキャピタルとの連携などに早くから取り組んでおり、東大発のベンチャー企業はすでに200社を突破している。加えて、育成支援のためのインキュベーション施設の整備や企業・メンターとの人的ネットワークの形成なども進めた結果、時価総額も計1兆円を超えるほどに成長してきている。
他方、その規模はシリコンバレー等と比較して大きく劣っているとの課題もある。
■ 埋没する技術・知財
シリコンバレー等と比較して日本にベンチャー企業が広がらない理由として、企業や産学共同研究の成果である優れた技術の多くが、ベンチャー企業などで活かされることなく埋没していることがある。
現在、大学と企業の共同研究によって得られた特許の約7割は大企業に供給されるが、企業側の事業領域との整合性などにより、その多くが自社での事業化やスピンオフベンチャーの設立等が行われず埋没している。結果、ベンチャーに供給される知財は全体の1%程度にとどまっており、多くの特許が中小企業・ベンチャー企業に移転される米国大学とは大きな差がある。
つまり、ベンチャー企業の創出・育成の加速には、これまで以上に大学・大企業・ベンチャーキャピタルとベンチャー企業が相互に連携して知財・人材・投資を融通しあう仕組みが必要である。
■ 経団連と連携したベンチャー企業育成
東京大学では今後、大学・大企業・ベンチャーキャピタル・ベンチャー企業の4者が連携したイノベーションシステムの構築に向け、文部科学省の「特定研究成果活用支援事業(国立大学等によるベンチャーキャピタル等への出資)」などを活用してベンチャー支援エコシステムのさらなる拡充に努めていく。
また大企業との連携を進める具体的な活動として、経団連と東京大学、大企業10数社で「東大・経団連ベンチャー育成会議」を設立することで合意した。今後、企業と大学の共同研究成果を活かした共同ベンチャーの創出や、双方の技術と人材を組み合わせたベンチャーの創出、大学発ベンチャーと大企業間の連携強化(投資・調達関係等)などを活発化する仕組みづくりを進めていく。
【産業技術本部】