経団連は7月22日、東京・大手町の経団連会館でヨーロッパ地域委員会(佐藤義雄委員長、石塚博昭委員長)を開催し、長嶺安政外務審議官、鈴木英夫経済産業省通商政策局長(当時)から、日EU経済連携協定(EPA)交渉の現状などについて説明を聞いた。概要は次のとおり。
■ 長嶺外務審議官説明
EUとのEPA締結は、EUとの関係強化、日本経済再生、高いレベルの国際ルールづくりにつながるものである。他のメガFTAに後れることなく、スピード感を持って交渉を進める必要がある。
5月29日の日EU定期首脳協議(東京)において、両首脳は2015年中の大筋合意を目指すことで一致した。7月には、第11回交渉会合をベルギー・ブリュッセルで開催した。次回会合は9月14日の週に東京で開催する方向で調整しているが、それまでの間も準備を怠りなく進める。
7月の交渉会合では主に次の分野で協議が行われた。
- (1)物品市場アクセス=交渉の進め方について意見を集約した。センシティブ分野の調整を含めイニシャル・オファーからの進展は今後の交渉にかかっている。
- (2)非関税措置=交渉の進め方について意見を集約した。
- (3)政府調達=次回会合におけるオファー交換に向けて調整を行った。EUが重視している分野の一つである。
- (4)サービス・投資=高いレベルの開放を目指して首席交渉官レベルで交渉を行った。投資家対国家の紛争解決については、EU側の方針が近く示されるものと想定している。
- (5)競争、知的財産権=交渉の進め方について意見を集約した。EUが重点を置く地理的表示制度については、わが国の新法との調和が課題の一つである。
■ 鈴木通商政策局長説明
5月の定期首脳協議、7月の交渉会合を経て、今年中の合意に向けて今後の交渉の進め方について認識を共有したことは、非常に大きな進展だと考えている。
関税については、日本側の対EU関心品目である工業製品と、EU側の対日関心品目である農産品との間をいかにバランスさせるかが、TPP交渉とも絡んでポイントとなる。非関税措置については、できること、できないことを仕分けしながら進める必要があるが、将来的に日EU間の規制協力がグローバルなルールづくりにつながるようなかたちで交渉を行うことが重要である。
政府調達は、EU側の関心が高く、EU・米国間の環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)やEU・カナダ包括的経済貿易協定(CETA)でも争点になっており、日本としても知恵を出す必要がある。
日EU間の規制協力については、今年3月に日EU産業政策対話の成果として共同文書を取りまとめ、ロボットなど12分野13項目で具体的な協力を進めることで一致しており、日EUの経済界からも支持を得ている。
また、アフリカにおける持続可能な都市開発に関するフランスとの協力、ドイツへの中堅・中小企業ミッションの派遣などEU加盟国との二国間協力も進展している。
【国際経済本部】