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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年7月30日 No.3234 第112回経団連労働法フォーラム -「『多様な働き方』の実現に向けた人事労務管理」「労働者派遣法改正案のポイントと対応策」

経団連および経団連事業サービスは16、17の両日、経営法曹会議の協賛により、第112回経団連労働法フォーラムを都内で開催した(前号既報)。弁護士報告および質疑応答の概要は次のとおり。

「『多様な働き方』の実現に向けた人事労務管理」(山畑茂之弁護士)

■ 限定正社員制度(多様な正社員制度)

働き方に対する労働者のニーズが多様化するなか、多様な働き方を実現する観点から、職務や勤務地等が限定された無期雇用の「限定正社員」が注目されている。限定正社員制度の導入により、育児や介護など家庭事情を持つ従業員の離職を防ぐことが期待され、また、労働契約法第18条に基づく有期労働者の無期転換の受け皿として活用できるなど、企業にもメリットがある。

制度導入にあたっては、就業規則や労働契約書で職務や勤務地等が限定されていることを明確にしておくことが重要である。ただし、1つの就業規則で複数の雇用区分の労働条件を規定しようとすると、本来、適用を意図していなかった条項(例えば配転条項)が適用されるかのような体裁になってしまうおそれがあり、「正社員」とは別の規程を作成しておくべきである。

「限定正社員」の解雇については、職務の廃止あるいは事業所の閉鎖があれば直ちに有効とされるものではなく、解雇権濫用法理(労働契約法第16条)の適用を受ける。裁判例をみると、勤務地が限定された労働者の整理解雇については、整理解雇法理またはこれに準拠した枠組みを用いて解雇の有効性が判断される。具体的には解雇回避努力として他の勤務地への配転を検討すべきとされる傾向があるが、他の勤務地の人員を削減して配転させることまでは求められてはいない。また、職務が限定された労働者の能力不足解雇については、解雇事由の該当性は、限定された職務に求められる能力あるいは期待の高さを基準に判断されている。

<質疑応答>

参加者からは、限定正社員制度を導入する場合の制度設計の考え方について多く質問があった。これに対して弁護士からどのような目的で制度を導入するのか、労使のニーズを明確にすることが出発点となること、また、他の雇用区分との処遇の違いについては、違いの合理性を説明できるフェアなものとすることが重要との回答があった。

「労働者派遣法改正案のポイントと対応策」(藤田進太郎弁護士)

■ 労働者派遣法改正案の概要

今通常国会で審議中の労働者派遣法改正案は、派遣可能期間の制限を現行の「業務単位」(26業務か否か)から「人単位」(派遣元で有期雇用か否か)に見直すとしている。具体的には、(1)人数にかかわらず同一の派遣先事業所での有期雇用派遣労働者の受け入れを最長3年とする「事業所単位」(2)派遣先の同一の組織単位(いわゆる課に相当)における同一の有期雇用派遣労働者の継続受け入れを最長3年とする「個人単位」――の2つの制限が課されることになる。

このため、3年を超えて有期雇用の派遣労働者を受け入れる場合、派遣先は抵触日(最長3年)の1カ月前までの過半数組合等への意見聴取(事業所単位)と派遣労働者1人ひとりの受け入れ期間の把握(個人単位)が必要となる。

なお改正法の施行前に締結した労働者派遣契約には、旧法が適用されるという経過措置が設けられる。条文を読む限りでは、仮に期間制限違反となっても、労働契約申込みみなし制度(2015年10月1日施行)は適用されないと考えられることから、経過措置の利用は検討に値する。今後は、有期雇用と無期雇用の派遣労働と請負・業務委託について、それぞれのメリットとデメリットを踏まえながら、使い分けを検討していくことが必要となろう。

<質疑応答>

参加者からの派遣期間制限に関する質問に対し、弁護士からは、違反した場合には勧告、企業名公表の対象になるとともに、10月1日からは労働契約申込みみなし制度の対象にもなるため、個人単位と事業所単位の抵触日を適切に管理することが極めて重要になるとの指摘がなされた。

また、事業所単位の期間制限への対応に関して、過半数労働組合が存在しない事業所については、労働者の過半数代表者から意見聴取をしなければならないが、適正な選出手続きに基づいた代表者でなければ法違反となり、労働契約申込みみなし制度の対象になることに留意が必要との指摘があった。

【労働法制本部】

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