経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で情報通信委員会企画部会(武山芳夫部会長)を開催し、欧州デジタル単一市場(Digital Single Market、DSM)戦略をはじめとする欧州のICT政策をめぐる動きを中心に、総務省情報通信国際戦略局の玉田康人国際経済課長と意見交換を行った。
冒頭、武山部会長は、今年5月6日に欧州委員会が28加盟国のデジタル市場を1つに統合することを目指すDSMを創設するための戦略文書を公表したことを紹介し、欧州で国ごとに異なるさまざまな規制の見直しが進めば、欧州域内はもとより、域外の企業にとっても手続きが容易になることが期待されると指摘。DSMが世界経済のなかでどのようなインパクトをもたらすのか、関心の高い企業は多いと述べた。
玉田氏からは「DSM戦略」をはじめ「欧州データ保護規則案」「第5世代移動通信システム(5G)」「インターネットガバナンス」などの最近の動向について説明があった。
説明の概要は次のとおり。
■ 「欧州デジタル単一市場戦略」の動向
欧州指令の基準を満たす具体的な国内法の整備や運用は加盟各国に委ねられているため、各国の法制は微妙に相違している。このことが、欧州域内の企業・消費者にとって、ネット通販等における越境での購入・販売の促進を妨げる一因となっている。世界のICT企業トップ50のうち欧州企業は9社のみで、トップ10には欧州企業は存在しない状況であると、欧州側は説明している。
DSM戦略の大きな目的の1つは欧州域内での越境電子商取引を可能とするルールづくりであり、そのために小包配送の効率化・低廉化や自国からのネット接続のみ許可する等の商慣行(ジオブロッキング)の廃止をはじめとする16の措置事項が挙げられている。具体的な内容についての議論はこれからであるが、これらを通じて最大年間4150億ユーロの成長に寄与する見通しが打ち出されている。欧州側には日本や米国と情報交換しながら進めたい意向があり、総務省としても必要に応じて日本の産業界と情報交換をしながら対応していきたい。
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このほか玉田氏からは、欧州個人データ保護規則案に関する最新の状況や、今年5月27日に高市早苗総務大臣とギュンター・エッティンガー欧州委員会委員との間で第5世代移動通信ネットワーク(5G)をめぐる戦略的協力に関する共同宣言に署名したことなどについて紹介があった。また、今年が2005年の世界情報社会サミット(WSIS)で採択された成果文書(チュニスアジェンダ)の全体総括レビューを行う年となっているため、12月の国連総会に向け産業界とも協力して準備をしていきたいと述べた。
【産業技術本部】