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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年7月16日 No.3232 2030年に向けた教育のあり方聞く -OECDのシュライヒャー教育・スキル局長から/教育問題委員会

説明するシュライヒャー氏

経団連の教育問題委員会(中西宏明委員長、渡邉光一郎委員長)は6月30日、東京・大手町の経団連会館で経済協力開発機構(OECD)教育・スキル局長のアンドレアス・シュライヒャー氏との懇談会を開催した。シュライヒャー氏はOECDでPISA(生徒の学習到達度調査)等の国際比較事業を創設し、教育政策分析や提言を行ってきた経験を持つ。今回は、2030年に向けた教育のあり方について説明を聞いた。

■ “Education 2030”プロジェクト

シュライヒャー氏はまず、OECDが“Education 2030”と題するプロジェクトを実施していることを説明。「このプロジェクトは、OECDが東日本大震災の復興支援として行った“Tohoku School”の成功を受け、安倍総理からOECDに対して実施を依頼されたもので、OECDの全加盟国に参加を呼びかけている。世界がより複雑で不安定になり、多様化が進むと予想される2030年に向けて、子どもたちに求められる『知識・スキル・行動』を特定・再定義し、それらの素質や能力を育むために必要な教育についての長期的な議論を促進すること等を目的としている」と紹介した。

■ 社会の変化と教育改革の必要性

続いてシュライヒャー氏は、米国や日本において、過去50年間で増加した職業と減少した職業を分析したところ、非定型的・対話型、非定型的・分析型のスキルが必要な職業は増加したが、定型的なスキルが求められる職業は減少していることをデータで示し、「今後も、簡単に教えられることは簡単に自動化・IT化され、外部委託されるだろう」と警鐘を鳴らした。

また、科学技術と教育の関係について、例えば英国の産業革命時のように、科学技術の進歩に比して公教育の普及が遅れると、失業等により時代の恩恵を受けることができない人々が多く生じる“社会的な痛み”が発生することを指摘。「デジタル革命が起きている現代においても、技術革新に国民がついていけるよう、教育の質を上げていく必要がある」と語った。

■ 2030年に求められる能力と教育のあり方

シュライヒャー氏は、2030年に求められる能力として、(1)グローバル化し複雑化する社会において、多様な協力関係を結びそれらを管理する能力(2)問題の細かな要素を結びつけ価値を生み出す能力(3)情報を整理する能力(4)専門家としての深い知識と、ゼネラリストとしての知識の幅広さをあわせ持つことなどを挙げた。また、忍耐力や自信のある生徒ほど数学の成績が良いというデータを示し、「認知能力以上に重要な要素として、社会的スキルや感情的スキルがある」と述べた。

そのうえで、これらを総合した21世紀型の教育のカリキュラムとして、(1)知識(伝統的な数学・言語などの教科、現代的な知識としてのロボット工学・起業など)(2)スキル(創造性、批判的思考能力、コミュニケーション能力、協働等)(3)人格形成(好奇心、勇気、立ち直る力、倫理観、リーダーシップ等)の3要素を網羅した枠組みづくりが必要であると強調した。

【教育・スポーツ推進本部】

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