経団連は地方経済の活性化に向けた行政体制のあり方等について検討を深めるため、地域経済活性化委員会(古賀信行委員長、小林哲也委員長)を発足した。政府において地方創生の各種政策が実践に移されるなか、同委員会は6月25日、一橋大学の辻琢也副学長から本社機能の地方移転を促す施策等について説明を聞くとともに懇談した。
辻副学長は、まずわが国の人口動態を踏まえ、2040年における地方都市および大都市の将来像を説明。「人口減少により、低密度化と地域的偏在が進行している40年には、地方都市で人口が激減する一方、大都市では人口減少が進むとともに高齢者が激増する。人口減による低密度化に対応するうえでも、20~30万人規模の圏域を念頭において、企業も行政も活動を展開することが必要」とした。そのうえで、まち・ひと・しごと創生総合戦略や地方税制改革に関して、「今般の地方拠点強化に関する税制措置は、地方移転を検討している企業のバリアーを低くしようとするもの。この措置を目当てに移転というケースが出るかは難しいが、移転予定があるのであれば、この措置を活用できる時期に行うほうが望ましい。また、今ある地方拠点を強化する方向も望ましい。また法人事業税等の外形標準課税に関していえば、対象外法人の扱いをどうするかが課題になる」と述べた。
また、地方創生に向けた本社機能移転以外の施策についても言及し、奨学金を活用した大学生の地方定着、連携中枢都市圏形成による広域連携促進の重要性を指摘したうえで、富山市の取り組み、札幌圏の企業誘致策を紹介。「企業は資産デフレが発生する地域には投資できない。コンパクトシティ、広域の都市連携の枠組みのなかで、企業の集積を図る支援策を盛り込んでいくことが本社機能の地方移転の促進につながる」との考えを示した。
懇談では、地方と組むことで生まれる企業側のメリットは何かとの質問に対し、辻副学長は、「大企業に国内回帰の動きは生まれている。カントリーリスクを抱えながら、安い労働力を求めて海外拠点を運営するよりも、国内に拠点を設け安定した運営を選ぶ企業も出てきている。地方は東京とは別の角度から世界と戦うことが重要。グローカルな視点で地方の多様性を活かすべき」と述べた。
【産業政策本部】