21世紀政策研究所(榊原定征会長、三浦惺所長)は6月18日、都内で経団連の訪米ミッションの事前準備の一環として、参加スタッフなどを対象とした「米国政治と日米関係」についての研究会を開催した。同研究所では昨年度から「日米関係に関する研究プロジェクト」(研究主幹=久保文明東京大学教授)を立ち上げ、日米関係の一層の強化方策について検討を重ねている。当日は、久保研究主幹、研究委員の前嶋和弘上智大学教授、中林美恵子早稲田大学准教授が、日米関係の主要課題についてのレクチャーを行った。
最初に、久保研究主幹から、現在の米国政治の動向を理解するポイントとして、(1)経済が好調にもかかわらず悲観的なままの国民マインド(2)議会における分割政府状態(ねじれ国会)――という2つの懸念材料があると指摘。それを踏まえたうえで、オバマケアをはじめとする各種課題の現状と方向性について整理した。
また、外交に関しては「孤立主義」への回帰とも指摘されているが、南シナ海の領土問題やウクライナ問題などに対し明確な方針を打ち出せない現状について、ティーパーティー運動による影響など、その要因を解説した。さらに日本との関係にかかわる課題として、歴史問題を含め、日本からのメッセージや日本の国際社会への貢献が正しく伝わっていない問題を指摘した。
次に前嶋研究委員、中林研究委員が個別テーマを解説。前嶋研究委員はTPP(環太平洋経済連携協定)とエネルギー・環境問題を担当、TPPについては、反対論の背景、議会の直近の審議状況を踏まえながら、TPA(貿易促進権限)法案成立の見込みなど今後の見通しについて解説した。
またエネルギー・環境問題については、オバマ政権初期のクリーンエネルギー政策の挫折の背景、温暖化と二酸化炭素の因果関係に疑問を持つ世論の存在やシェールガス革命による代替エネルギーの必要性低下などについて触れつつ、レガシーづくりとしての最近の大統領権限による環境規制の動きを紹介した。
中林研究委員からは、大統領選挙の動向として、共和党の候補者乱立の状況などを確認しながら、外交より経済を重視する世論、「クリントン家」対「ブッシュ家」といった切り口からの分析が示された。
そのほか、近年改善をみせているものの将来的な増加が懸念される財政赤字の動向、新年度予算の策定スケジュールと税制などの関連テーマのポイントについての解説があった。
【21世紀政策研究所】