経団連の起業・中堅企業活性化委員会人材活躍推進部会(立石文雄部会長)では、労働力人口のさらなる減少が見込まれるなか、中堅企業の発展のためには、多様な人材の活躍が不可欠であるとの認識のもと、ダイバーシティ経営の推進について議論を深めている。
この一環で5日、障がい者雇用の推進をテーマにオムロン特例子会社のオムロン京都太陽(京都市)を視察した。同社は1985年にオムロンと社会福祉法人太陽の家の共同出資会社として設立。現在、障がい者143名、健常者36名の計179名(太陽の家の利用者を含む)がソケットやセンサーといった産業用機械で使われる製品や体温計などの健康器具などを製造している。
同社の谷垣信也社長は、オムロンの企業理念に基づき、社員一人ひとりが「絶えざるチャレンジ」と「人間性の尊重」を実践することで(1)職能的重度障がい者の雇用機会創出(2)事業を通じて顧客満足と収益を確保(3)障がい者雇用ノウハウを広く社会に提供――という3つの使命を果たしてきたことを強調。現場の取り組みは、「能力開発」と「生産ラインの最適化」の2つに分けられると説明した。
視察では、生産ラインの最適化について、オムロンの生産技術と現場の創意工夫により、障がい特性にあわせた生産設備・治具の開発・改善を進めていることの紹介があり、生産現場において、片手でもベストポジションでソケットの生産が行えるラインや、車いす利用者の動きにあわせて、作業台が左右に移動する仕組みなどを見学した。
また、能力開発と生産ラインの最適化に共通する取り組みとしては、「徹底3S」が紹介された。これは、(1)身の回りには4時間以内に必要なもののみを置く「整理」(2)必要なものを6秒以内に取り出せる「整頓」(3)毎日の徹底的な「清掃」――の3点を職場全体で実践しているもの。清掃がしやすいようにすべてのゴミ箱を床から浮かせて設置する徹底ぶりに、参加した委員から驚きの声があがった。
生産現場の視察を終えた後、谷垣社長と管理スタッフを交えた意見交換では、民間企業が障がい者雇用に取り組むことの意義や課題などについて活発な議論が行われた。参加委員からは、地域社会への貢献という観点から障がい者雇用に前向きに取り組んでいくとの意向が示されたほか、在宅勤務をはじめとした働き方の選択肢の拡大や職場におけるサポート体制の拡充についても、意見が出された。
一方、労働需給が逼迫しているため、中堅企業では障がい者の採用が非常に困難であることから、行政機関等とも連携をしながら、精神障がい者の活用を進めていくことが課題であるとの認識が共有された。
【労働政策本部、産業技術本部】