経団連の産業技術委員会企画部会(須藤亮部会長)は、産業競争力懇談会と合同で14日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、総合科学技術・イノベーション会議の久間和生議員、内閣府の中川健朗大臣官房審議官から、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の概要と、プログラム・マネージャー(PM)の新規公募について説明を聞き、意見交換を行った。概要は次のとおり。
■ ImPACTについて
ImPACTは、内閣府のイニシアティブにより2014年に創設された合計550億円の研究開発プログラムである。実現すれば産業や社会のあり方に大きな変革をもたらす革新的な科学技術イノベーションの創出を目指し、ハイリスクかつハイインパクトな挑戦的研究開発を推進する。
ImPACTでは、国が実施している他の研究開発プログラムとは一線を画する画期的な仕組みを取り入れている。例えば、米国DARPA(国防高等研究計画局)の仕組みを参考とし、研究者に対してではなく、研究開発の企画・遂行・管理等の役割を担うPMに大規模な予算と強力な権限を与えている。
昨年6月には12名のPMが決定され、JST(科学技術振興機構)の職員としておのおのの所属先から独立し活動を行っており、このうち5名は産業界から選ばれている。また、2名の30代(採択時)の若く優秀な人材を選んだことも特徴的である。
ImPACTでは、採択後、PMが掲げたビジョンをもとに具体的にプログラムをつくり込み、PMによる公募や指名によって、将来の実用化や製品化を最優先とした産学官による柔軟な研究チームを編成し、ステージゲート方式(注)などチーム内に厳しい競争環境を導入している。さらに、政府としても研究体制や資金配分は固定せず、成果や進捗に応じて、予算の増減やプロジェクトの途中での廃止も行い得る厳格かつ特徴的な運営を行うことも、これまでにない仕組みである。
こうした「日本型」の非連続イノベーション創出システムは、アメリカやフランス、スウェーデン等の先進諸外国からも高い関心を得ている。
■ PMの新たな公募について
今回、6月5日を締め切りとして、3~4名程度を上限に特に優れたPMを追加公募することとなった。1プログラム当たりの規模は、10~15億円程度を想定しており、3年半程度のプログラムとなる。
前回以上に面接審査を重視し、ImPACTの趣旨に適した構想か、PMとしての資質は優れているかをより的確に審査する。経済的・社会的なインパクト、技術的サプライズ、PMのリーダーとしての素質の3点がImPACTとしての選考の重要なポイントとなる。
<意見交換>
委員からの「前回の選考で落選したプログラムの再応募は可能か」との質問に対し、久間議員から「前回落選組のリターンマッチは歓迎。大学関係者と比較したとき、産業界の人は技術的なサプライズを明確にすることが不得意という印象があるので、留意してほしい」との回答があった。また、中川審議官から「どの研究者でもPMのリーダーシップのもとで協力してくれる点、JSTが全面的なサポートをしてくれる点において、『お得』なプログラムと考えている。産業界の人にとっても、大学や国立研究開発法人の優秀な頭脳を率いてプロジェクトをリードする機会は貴重だと思う」と産業界への期待が述べられた。最後に、久間議員から「ImPACTのような取り組みが広がり、他省庁版、産業界版が生まれることにも期待している」とのコメントがあった。
(注)ステージゲート方式=研究開発を複数のステージに分け、各ステージでの評価に基づいて研究チーム・プロジェクトの続行(ゲートの通過)・廃止を決定する仕組み
【産業技術本部】