4月21日、インドネシアのジャカルタでアジア・アフリカ・ビジネス・サミットが開催された。同サミットは、1955年のアジア・アフリカ会議(いわゆるバンドン会議)60周年記念事業の一環として、インドネシア商工会議所(KADIN)が主催。アジア・アフリカ諸国との経済関係強化に向けた方策について議論を行った。
アジア、アフリカ47カ国から経済界幹部が出席し、開会セッションにおいてジョコ・ウィドド・インドネシア大統領が来賓あいさつを行った。経団連からは、榊原定征会長の名代として矢野薫審議員会副議長・国際協力委員会共同委員長が出席し、貿易投資拡大、インフラ整備、人材育成等に関する演説を行った。概要は次のとおり。
■ スリストKADIN会頭
60年前、非同盟諸国の首脳がバンドンに集結し、第三勢力の存在が確立された。その精神は今日でも根強く生きているが、アジア・アフリカの状況は当時から大きく様変わりしている。アジア、アフリカは共に世界で最も成長している地域である。実際、インドネシアへの外国投資残高は90年の28億ドルから2010年の2170億ドルに、20年間で100倍近く増えている。今後とも持続的成長を続けるためには、ビジネス環境の整備、中小企業の育成等、ボトルネックの解消に向け、現実的な課題と向き合う必要がある。
■ ジョコ・ウィドド大統領
今日、アジア・アフリカは成長のシンボルであり、両地域のさらなる発展に向けて協力関係を深化させる時機が到来している。アフリカは資源が豊富であるのみならず、消費市場としても有望である。ボトルネックの解消のためには、エネルギー、農業、中小企業を中心とした製造業の発展が不可欠である。これらの分野で民間企業が最大限力を発揮するためには、規制緩和と人材育成の推進がカギとなる。
■ 矢野審議員会副議長
バンドン会議が開催された55年当時、日本は決して豊かではなかった。当時の日本の1人当たりGDPは米国の10分の1にも満たなかった。高度成長を経て経済大国となった今日、貿易投資、インフラ整備、人材育成を通じてアジア・アフリカ諸国に貢献したい。
地域経済統合は貿易を活性化させ、持続的成長の基盤となる。アジアでは今年、ASEAN経済共同体(AEC)が発足する。アフリカでも、南部アフリカ経済共同体(SADC)等を通じ、地域統合が強化されている。地域経済統合に参加すべく現在、日本は東アジア包括的経済連携(RCEP)交渉に参加している。保護主義を排除するためにも、EPAは物品貿易、サービス、投資、資源輸出制限の禁止、知的財産権保護、送金の自由等を含む包括的なものであるべきだ。
アジア、アフリカの持続的成長のためには、域内の連結性を確保するかたちでインフラ整備を進めることが重要。インフラ整備による連結性強化は、資源エネルギー開発、直接投資誘致、産業集積の基盤となる。インフラ整備には膨大な資金を要する。そこで、基礎部分を公的資金で賄い、採算がとれる部分には民間資金を投入する官民連携のスキームが不可欠である。経済界は、アジアにおけるインフラ整備の経験を基礎に、積極的にPPP事業を推進する。
人材育成に関し、経団連はJICA(国際協力機構)と連携してABEイニシアティブを推進している。本件は、有能なアフリカの学生に日本で修士レベルの高等教育を受け、企業で研修する機会を与えるものである。合計1000人の候補者が日本で学ぶ予定である。
日本が経済発展を遂げた理由は「戦後70年間にわたる平和」「政治の安定」「教育」の3点に尽きる。
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同サミットは、貿易障壁の解消、ビジネス環境整備、農業振興、中小企業に対する技術支援、南南協力、アジア・アフリカ諸国の経済界の対話の場の設置等に関する共同宣言を採択して閉会した。
【国際協力本部】