前回までさまざまな業界における地球温暖化問題への取り組みを紹介してきた。最終回となる本稿では、経団連が各業種の協力を得て取りまとめた「2030年に向けた低炭素社会実行計画(フェーズⅡ)」の概要を紹介する。
第1回に一部紹介したとおり、経団連は、温暖化対策に一層の貢献を果たすため昨年7月、2030年に向けた低炭素社会実行計画(フェーズⅡ)を策定することを公表した。フェーズⅡでは、国内の事業活動からのCO2排出について、従来の2020年を目標としたフェーズⅠに対し2030年の目標等を設定するとともに、主体間連携、国際貢献、革新的技術開発の各分野において、取り組みの強化を図るとの基本方針を打ち出し、これに沿って各業種に計画策定を呼びかけた。各業種において検討が重ねられた結果、4月2日現在51業種により計画が策定され、経団連ではこれを取りまとめ6日に実行計画を公表した。
2030年に向けた計画の概要は次のとおり。
1.国内事業活動における2030年の削減目標
参加業種は、国内事業活動における2030年のCO2削減目標を、経済的に利用可能な最善の技術(BAT、Best Available Technologies)の最大限の導入、積極的な省エネ努力等をもとに、一定の前提条件を置き、策定している。技術進歩等により新たなBATの利用が可能となった場合や前提条件に変化があった場合等には、目標水準を改定するなど、PDCAサイクルを推進するなかで不断の見直しを行う。
目標の達成に向けての多様な取り組みとして、生産設備の高効率化や廃熱回収などが挙げられている。
2.主体間連携の強化
参加業種は、製品の製造・生産工程にとどまらず、低炭素製品・サービスの提供を通じて、関連業種とも連携しながらCO2排出量の削減に貢献する。例えば、軽量かつ頑丈な素材(ハイテン鋼、炭素繊維等)の活用による輸送機器の燃費改善、高効率家電製品の普及による家庭部門の省エネ促進、ICTサービスによる社会全体の効率の向上などが挙げられる。
あわせて、国民運動を推進し、地球温暖化防止に関する国民の意識や知識の向上にも取り組む。例えば、製品の環境性能に関する情報提供(各種ラベリング等)、エコドライブの推進、消費者向けのイベント・展示・セミナー等の開催、環境家計簿の奨励、公共交通機関の利用促進などが挙げられる。
3.国際貢献の推進
参加業種は、途上国等に対し、わが国の優れた技術・ノウハウを国際ルールに基づき積極的に移転することによって、地球規模でのCO2削減に貢献する。例えば、製造プロセスの海外移転、省エネルギー・低炭素製品や機器の海外普及、途上国における人材育成、わが国の再生可能エネルギー技術の活用などが挙げられる。
また、国際規格の策定に向けた協力、わが国の多様な温暖化対策事例の紹介など、国際会議の場でも活動していく。
4.革新的技術開発
参加業種は、産学官による連携も活用しながら、2030年以降も見据えた中長期で、革新的技術の開発・実用化に積極的に取り組む。
具体的な技術として、例えば以下のものが挙げられる。
(1)省エネ設備・プロセス・機器等の開発
省エネ型セメント製造プロセス、人工光合成、環境調和型製鉄プロセス(COURSE50)、二酸化炭素回収・貯留(CCS)(2)燃料転換
バイオ燃料、水素エネルギー(3)低炭素製品・サービスの開発
革新的材料(バイオマス利活用も含む)、ZEB・ZEH(ネットゼロエネルギービル、ネットゼロエネルギーハウス)、次世代自動車(リチウムイオン電池や燃料電池の高性能化・低コスト化等)、ITS(高度道路交通システム)、超電導ケーブル
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経団連は、低炭素社会実行計画の実効性・透明性・信頼性を確保するため、今後PDCAサイクルを推進していくとともに、外部有識者で構成される第三者評価委員会の評価を受ける。あわせて、実行計画が温暖化政策の柱に位置づけられるよう、政府等に働きかけを行っていくこととしている。
※提言の全文は http://www.keidanren.or.jp/policy/2015/031.html 参照
【環境本部】