わが国産業界はこれまで、優れた省エネ・低炭素技術や製品の開発・普及を通じ、国内外における温室効果ガス削減に貢献してきた。
気候変動をめぐる国際交渉では、2015年末の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、2020年以降の国際枠組について合意することとされている。そのため今後わが国では、約束草案の策定を含め、2020年以降の温暖化対策の検討が本格化すると考えられる。わが国の温暖化対策を現実的かつ効果的なものにするためには、産業界の取り組みを十分踏まえた検討がなされなければならない。
そこで、地球温暖化防止に向けた産業界の取り組みを、連載で紹介することとした。第1回は、経団連の取り組みについて説明する。
■ 環境自主行動計画<温暖化対策編>による取り組み
経団連は1997年に「環境自主行動計画<温暖化対策編>」を策定し、地球温暖化防止に向けて主体的かつ積極的な取り組みを進めた。その際、(1)目標の設定(Plan)(2)目標達成に向けた取り組み(Do)(3)取り組みの進捗状況の定期的なフォローアップ(Check)(4)インターネット等を通じたフォローアップ結果の公表(Act)――によるPDCAサイクルを繰り返し、継続的な改善を行ってきた。また、外部有識者から構成される第三者評価委員会を設置し、透明性・信頼性の向上の観点から評価を受けてきた。
自主行動計画による取り組みの結果、2008~12年度の平均における産業・エネルギー転換部門(34業種)からのCO2排出量は、1990年度比で12.1%削減された。これは、日本政府からも「十分に高い成果を上げてきた」と評価されている。
■ 新たに低炭素社会実行計画を推進
2013年度以降については、自主行動計画の内容を拡充した「低炭素社会実行計画」のもとで取り組みを行っている。低炭素社会実行計画では、「2050年における世界の温室効果ガスの排出量の半減目標の達成に日本の産業界が技術力で中核的役割を果たすこと」を産業界共通のビジョンとして掲げている。現在、55の業種が、(1)国内の事業活動から排出されるCO2の2020年における削減目標の設定(2)消費者・顧客を含めた主体間の連携の強化(省エネ製品等による貢献)(3)途上国への技術移転など国際貢献の推進(4)革新的技術の開発――の4本柱から、主体的に取り組む内容をメニュー化し、PDCAサイクルを実施しながら、同計画を着実に推進している(フェーズⅠ)。
具体的には、国内の事業活動における2020年のCO2削減目標について、参加業種は、利用可能な最先端技術(Best Available Technologies、BAT)の最大限の導入等を前提に策定し、社会に対するコミットメントとして、確実な達成に向け徹底した努力を継続している。また、主体間連携の強化、国際貢献の推進、革新的技術の開発といった取り組みについて、削減ポテンシャルを可能な限り定量的に示し、より多くの製品・サービス・技術が国内外の消費者や顧客に受け入れられるよう全力で取り組み、事業活動を通じて、地球規模での温室効果ガス排出削減に貢献している。
さらに、経団連では、地球規模・長期の温暖化対策に一層の貢献を果たすため、低炭素社会実行計画に基づく取り組みをさらに拡充することとした(フェーズⅡ)。具体的には、国内の事業活動からの排出について、従来の2020年目標に加え2030年の目標等を設定するとともに、主体間連携、国際貢献、革新的技術開発の各分野において、可能な限り取り組みの強化を図っている。
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次回からは、地球温暖化防止に向けた各業界の取り組みについて紹介していく。
【環境本部】