経団連のヨーロッパ地域委員会は3日、東京・大手町の経団連会館でヴィオレル・イスティチョアイア=ブドゥラ駐日EU大使との懇談会(座長=佐藤義雄共同委員長)を開催し、日EU関係の現状と展望について説明を聞いた。また、日EU規制協力に関する提言(前号既報)について審議した。同大使の発言は次のとおり。
■ 日EU関係の現状
日EU関係は、政治・通商両面で潜在力を十分に活かしきれていない。志を高くして努力すべきことが多くあり、また、そうしようという気持ちも双方にある。日EU間には、日々の関係で培われた相互信頼があり、経済連携協定(EPA)および戦略的パートナーシップ協定(SPA)の交渉がまとまれば、必ずや関係をより高い次元に引き上げることができる。日EU首脳が「戦略的パートナーシップ」を口にする場合、それは日EU関係を超えた地域的・国際的なものであり、原理原則を共有し政治的な信頼関係で結ばれた、長期的に相互に裨益する関係を意味する。
EUは5億人の人口を擁する世界最大の経済主体である。金融経済危機にも対処し、さらに高度な統合へ歩みを進めている。ユーロは深刻な危機に見舞われたが、生き延びている。EUおよび加盟国のリーダーは、銀行同盟、エネルギー同盟といった新たなメカニズムをも生み出している。EU、ユーロには加盟したいと思わせる政治的、経済的引力が働いている。
■ 日EU関係の展望
今年は日EU関係にとって特別な年である。EUの新しいリーダーからは、日本との関係強化に取り組もうとのシグナルが発せられている。日EU間の政治レベルの会談も頻繁に行われている。今年第2四半期には、東京で日EU定期首脳協議が開催される。科学技術・イノベーション、安全保障ならびに気候変動や貧困等の国際社会が直面する課題に関する協力などがテーマになる。
SPAとEPAの二つの交渉は、日EU関係をより堅固なものにするという政治的なコミットメントの表明であり、また、繁栄だけでなく、ルールに立脚した国際関係を構築し、長期的な安全をも保障するための政治的プロジェクトを支える2本柱である。
SPAは、通商を超える広範な分野を対象としており、グローバルな課題に関する協力、地域・国際機関における影響力の強化のほか、マクロ経済政策の調整、航空輸送および金融サービスに関する対話、税務・通関に関する協力、インターネットの自由の確保、宇宙における行動規範、環境保護・公衆衛生に関する情報交換等が挙げられる。
EPAについては、安倍首相が表明している2015年中の大筋合意に向けて努力するが、内容が二の次になってはいけない。非関税措置、調達、農産品の関税等について日本側の野心のレベルを上げてもらいたい。日EU定期首脳協議までが極めて重要な期間となる。
【国際経済本部】