政府は総合資源エネルギー調査会の下に「長期エネルギー需給見通し小委員会」を設置し、エネルギーミックスの検討を開始した。過去の政府の検討では、過大な省エネルギー効果を見込んだ例もあり、今回の検討では、こうした事態を避けるべきである。
そこで経団連は2月18日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会企画部会(鯉沼晃部会長)を開催し、電力中央研究所の星野優子、杉山大志の両上席研究員から、電力需要の見通しや省エネ政策のあり方について説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。
■ 電力需要・省エネの見通し
「京都議定書目標達成計画」(2005年策定、06年と08年に改定)では、過大な省エネ効果を見込んだ結果、業務部門と民生部門においてCO2排出量の実績値が計画値を大きく上回った。エネルギー経済学では電力消費量の伸び率がGDPの伸び率を上回ることが常識とされており、日本でも第2次石油ショック時を除いてこのことが当てはまる。近年、日本の電力需要が伸びていないのは低成長が原因であり、政府が高い成長目標を立てているなかでは、相応のエネルギー需要を想定すべきである。
省エネの「ダブルカウント」も深刻な問題である。エネルギー・環境会議が12年に決定した「エネルギー・環境に関する選択肢」では、マクロ経済想定で大幅な省エネ効果を見込んだうえで、さらに規制や経済的負担を課すことによる省エネ効果を個別に積み上げていた。こうした省エネ効果のダブルカウントは避けるべきである。
■ 2030年までの経済・エネルギー需給展望
2030年までのエネルギー需要を見通すにあたっては不確実性が高く、省エネに対する期待が高くなりがちである。こうしたなかにあっては、過去、エネルギー需要が変化した際の要因を明らかにすることで、省エネに対する示唆を得ることが重要である。
業務・家庭部門に着目すると、東日本大震災前からエネルギー需要が減少傾向にあった。これは、2000年代後半からの原油価格の上昇と、それに連動した燃料価格の高騰による影響が大きい。
したがって、足もとの省エネが将来にわたって同じペースで継続するという前提で検討を進めると、原油価格の上昇が沈静化に向かった段階で、エネルギー需要が予想を上回って増加する可能性が高い。エネルギー需要を慎重に見通すとともに、将来の需要増加リスクを考慮したエネルギー供給面での検討が重要である。
【環境本部】