■ これまでの取り組み実績
国内約200の事業者が保有する総延長約25万キロメートルの導管で、豊かで快適な暮らしを実現し、広範な産業を支える都市ガス業界。都市ガスの主な原料である天然ガスは、化石燃料のなかでもカロリーあたりのCO2やNOxの排出量が最も低いといった環境調和性が高く評価されている。こうした特長により、ボイラー・工業炉等での産業用の都市ガス需要が急速に拡大するとともに、利便性の高い省エネルギー機器の開発により、地域冷暖房やコージェネレーションなど新たな用途も開拓してきた。その結果、都市ガスの製造量は2013年に約412億立方メートルと1990年から2.5倍以上に増加した。
そのような需要拡大のなか、都市ガス業界はガス製造・供給工程でのCO2削減に取り組んできた。1969年の液化天然ガス(LNG)導入以来、約40年の歳月と延べ1兆円以上の資金を投入し、都市ガスの原料を石炭・石油系から天然ガスへ転換した。それに伴い都市ガス製造効率(注)を99%以上に高めるとともに、LNGの冷熱利用設備やコージェネレーション・高効率ポンプの省エネ機器の導入などの地道な取り組みも積み重ねてきた。それにより、1立方メートルの都市ガスを製造するのに必要なCO2排出量(CO2原単位)を、1990年と比較して、ほぼ10分の1と大幅に削減した(図表1参照)。
■ 「低炭素社会実行計画」によるCO2削減への取り組み
都市ガス業界は経団連の低炭素社会実行計画に参画し、(1)2020年の製造・供給工程における目標(9.9グラム―CO2/立方メートル)を設定して達成を目指すと同時に、(2)都市ガス消費段階におけるCO2削減(3)国際貢献の推進(4)革新的技術の開発――の四つの取り組みを進めている。2020年以降に関しても引き続き低炭素社会実行計画フェーズⅡとして計画している。
都市ガスを製造・供給する時に発生するCO2に比べて、お客さま先で都市ガスが消費される段階で発生するCO2排出規模は約200倍と非常に大きい。そのため、製造・供給工程での取り組みに加え、消費段階における取り組みにも力を入れている。以下にフェーズⅡの主な内容を記す。
(1)製造・供給工程での取り組み
製造・供給工程での電力や熱の削減のため、主に(1)LNGの冷熱利用(2)コージェネレーションの導入(3)設備の高効率化(4)運転の効率化――の四つの対策に取り組んできた。
今後、CO2削減を進めるために都市ガスの需要拡大が望まれるが、その場合、遠隔地まで多量の都市ガスを届けることになる。そのためには工場から都市ガスを送出する時の圧力を今より上げる必要があり、CO2原単位が増加することが想定される。その増加を極力緩和するために、上述した(1)~(4)の対策を最大限計画に織り込んだCO2原単位目標(2030年10.4グラム―CO2/立方メートル)を設定した。
(2)消費段階での取り組み
製造・供給工程よりも消費される段階でのCO2排出規模が大きいため、お客さま先での省エネが重要である。また、都市ガス以外のエネルギーを、カロリーあたりのCO2排出量が低い天然ガスに切り替えることで、多大なCO2削減効果が期待できる。
都市ガス業界は、天然ガスの高度利用、高効率ガス機器の導入(コージェネレーション・燃料電池・高効率ガス給湯器・ガス空調・天然ガス自動車など)や、石油・石炭を利用する消費機器の天然ガス燃料への切り替え、再生可能エネルギーと天然ガスの融合など、省エネ機器の普及や天然ガスシステムの普及に取り組むことで、お客さま先でのCO2削減に貢献していく(図表2、図表3参照)。
(日本ガス協会)
【環境本部】