政府は総合資源エネルギー調査会の下に「長期エネルギー需給見通し小委員会」を設置し、エネルギーミックスの検討を開始した。電力システム改革が推進されるなか、エネルギーミックスにおいて、再生可能エネルギーをどう位置づけるかは重要なテーマである。
そこで経団連は2月10日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会企画部会(鯉沼晃部会長)を開催し、政府の電力システム改革小委員会制度設計ワーキンググループや新エネルギー小委員会の委員を務める東京大学大学院経済学研究科の大橋弘教授から、電力システム改革と再生可能エネルギー導入方策のあり方等について説明を聞いた。
説明の概要は次のとおり。
■ 問題意識の背景
日本の電気事業制度は9電力体制を軸として需給バランスを確保してきた。しかし、再生可能エネルギーの大量導入や電力の小売全面自由化といった環境変化を踏まえると、国民負担低減のため、電力市場の活用や電源の広域運用が不可避となっている。
■ 再生可能エネルギー導入の現状
固定価格買取制度では、電源投資費用に一定の利益率を乗せ、電気料金に再エネ賦課金を加えて需要家から回収している。これにより、電源投資は促進されたが、電源投資に伴う不確実性を解消するためのコストが需要家に転嫁されていることに留意すべきである。
太陽光発電は、夏には需要ピーク時の供給力として機能するといわれている。しかし、秋や冬には、九州電力管内で起きたように、太陽光だけで最大需要を超える供給力が生じてしまう面もある。
2014年4月から、回避可能費用(注)の算定方法が変更になり、太陽光については火力発電の平均可変費を用いることとなった。これによって再エネ賦課金は下がったが、その分賦課金以外の電気料金が上がったので、国民負担に変化はない。
■ 広域メリットオーダー
全国レベルで発電効率を最適化するためには、地域間で電源をシェアすることで全体の経済性を高める「広域メリットオーダー」の実現が有効である。そのためには、先に登録した事業者が連系線の利用順位の上位となる現行ルールを改め、経済性の高い電源を優先するルールに改める必要がある。
■ シミュレーション
各電力会社から公表されている「供給計画」等を踏まえた中長期のエネルギーミックスとその経済影響に関する分析をした結果、再生可能エネルギー導入を抑えて原子力発電所を動かせば、経済性の面でプラスになることが示唆される。
(注)回避可能費用=電力会社が再生可能エネルギーを買い取ることで本来予定していた発電を取りやめ、支出を免れることができた費用
【環境本部】