経団連は2月16日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会(中西宏明委員長、渡邉光一郎共同委員長)を開催した。東京工業大学(以下、東工大)の三島良直総長から、教育改革を通じて同大学が目指す人材の育成について説明を聞くとともに懇談した。
■ 東工大の教育改革が目指すもの
三島氏はまず、東工大の特徴として、学部生4800人に対して大学院生5100人で、学部生より大学院生のほうが多いことや、学生数の13%を留学生が占めることを紹介。また、「東工大の使命は日本と世界に貢献する人材を輩出すること。東工大が150周年を迎える2030年までに、世界トップ10に入るリサーチユニバーシティを目指す」と述べた。教育改革については、「卓越した専門性に加えて、リーダーシップを備えた理工系人材の育成を目指し、16年4月からの実施に向けて改革を進めている」ことを説明した。
■ 教育改革の具体的な内容
三島氏は教育改革の内容として、第一に、「教育システムの刷新」を挙げ、日本の大学で初めて、学部と大学院を統一した“学院”を設けることに言及。具体的には、現在三つの学部と六つの大学院研究科から構成されている組織を6学院・20系に整理するとして、「学士と修士課程、修士と博士課程の教育カリキュラムをシームレスに設計することで、学生が入学時から大学院までの出口を見通すことができる。最短6年で博士を取得する、途中で海外に留学するなど、学生が自らの興味・関心に基づいて多様な選択・挑戦をすることが可能になる。また一貫教育により学際知識が拡充される」とメリットを強調した。
第二に、「教育の質保証」を挙げ、(1)教員が質の高い最新のカリキュラムを提供すること(2)科目のナンバリングやシラバスの英語化を通じて東工大のカリキュラム構造を世界のトップスクールと比較できるようにすること(3)従来の学年進行から、「個々の学生が何をどれだけ学んだか」を評価する達成度進行に変えること――などを説明した。
第三に、「最先端の研究者、ノーベル賞級の発見・発明者等が、実験の実演を伴った講演を行う“レクチャーシアター”や、学生の能動的な学修参加を促す双方向授業を取り入れる」など、新しい教育環境を実現することを説明。一連の改革を機能させるために、学生と教員へのサポート体制を構築することにも言及したうえで、学生目線で教育改革を行うことの重要性をあらためて強調した。
続く意見交換で、経団連側から「教育改革への教員の支持をどのように得たのか」と質問したのに対し、三島氏は「当初、教員からは、現在も優秀な学生が入学し、卒業時には一流企業に就職しているのだから、なぜ改革する必要があるのかという意見があった。しかし、入学時から卒業時までに学生にどれだけ付加価値をつけられるかが東工大の教育の意味であると説得した結果、多くの教員が納得してくれた」として教員側にも意識変化があったことを説明した。
【社会広報本部】