経団連のアメリカ委員会(石原邦夫委員長)は2月23日、東京・大手町の経団連会館で米外交問題評議会(Council on Foreign Relations)のシーラ・スミス日本担当シニア・フェローを招き、米国政治の現状やTPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする日米関係の課題等について説明を聞き、意見交換を行った。スミス氏の説明概要は次のとおり。
■ 2016年大統領選挙 ― 浮動票の行方が結果を左右
1960年代以降、米国民の政治的二極化が進んでいる。世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」によれば、民主党支持層におけるオバマ政権支持率は任期中平均で81%だが、野党支持層の場合は14%で、過去最低となっている。この二極化の結果、16年大統領選においても、党派を超えて圧倒的な支持を集める候補者が出るとは考えにくい。無党派層の動向が選挙結果を左右する可能性が大きく、スイング・ステート(選挙のたびに共和党・民主党の間で勝利政党が変わる州)での勝敗がポイントとなろう。
政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が最近実施した調査によれば、共和党の大統領候補として、最も高い支持を集めるのは、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事である。しかし、支持率は13.7%で、第2位のマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事、第3位のランド・ポール上院議員(ケンタッキー州)を大きく引き離しているわけではない。民主党候補としては、ヒラリー・クリントン元上院議員が絶大な人気を誇るが、出馬表明には至っていない。
■ 日米関係の重要課題
下院で貿易政策を担当する歳入委員会のポール・ライアン委員長は、通商交渉に関して政府が議会と継続的に対話すること等を、大統領へのTPA(貿易促進権限)付与の条件とした。政府と議会との間で、このような条件闘争が行われること自体、TPA付与に向けた動きが進展している証左である。
共和党内には、茶会系議員も含めてTPPを支持する声が大きいが、民主党内には反対も根強い。このため、オバマ大統領は、お膝元の与党民主党の賛同を得ることに苦労するおそれがある。TPP交渉成功の機会を逸しないためには、大統領選挙に向けた動きが本格化する前、遅くとも今年半ばごろまでに、大筋合意を達成する必要がある。
ゴールデンウィーク中に安倍首相訪米が検討されている。戦後70周年という節目に、同盟関係のさらなる発展に資する共同声明がまとめられることを期待している。安倍首相が米国議会で演説することになれば、日米関係のみならずアジア全体にかかわる重要なスピーチとなろう。
【国際経済本部】