経団連は1月22日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(下村節宏委員長)を開催した。内閣府宇宙戦略室の中村雅人審議官から、新たな宇宙基本計画について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 新たな宇宙基本計画
政府の宇宙開発戦略本部(本部長=内閣総理大臣)は、1月9日に新たな宇宙基本計画を決定した。同計画は、「国家安全保障戦略」に示された新たな安全保障政策を十分に反映し、また産業界の投資の予見可能性を高め産業基盤を維持・強化するため、今後20年程度を見据えた10年間の長期的・具体的整備計画である。安全保障政策と宇宙産業基盤の強化については、経団連の「宇宙基本計画に向けた提言」と認識を一にするものである。
宇宙政策の目標は、宇宙安全保障の確保、民生分野における宇宙利用の推進、産業・科学技術基盤の維持・強化の三つである。
今回の宇宙基本計画は本文と工程表の2部構成とし、毎年宇宙開発戦略本部が工程表を改訂する。政府が工程表に従って施策を実施し、宇宙機器産業の事業規模として、官民合わせて10年間で5兆円を目指す。政府は基幹ロケットを優先的に使用し、10年間で、液体燃料ロケット(H-ⅡA/Bロケットと新型基幹ロケット)で34機の衛星、固体燃料ロケット(イプシロンロケット)で10機の衛星を打ち上げる予定である。
衛星測位分野では、準天頂衛星は現在の1機から2017年度には4機に増やし、23年度をめどに持続的な測位が可能となる7機体制を目指す。これにより自動車のカーナビ、スマートフォン、腕時計などに準天頂衛星のデータの利用が広がる。
さらに安全保障にとって重要な情報収集衛星については、従来の4機体制から機能を拡充・強化させ、機数を増加させる。
国際宇宙ステーションへの21年以降の参加の延長については、16年度末までに結論を出す。
このほか「宇宙システム海外展開タスクフォース」を15年度前半に立ち上げ、官民一体となって海外の市場を開拓する。
また平成27年度宇宙関係予算は2786億円となり、対前年度比で1.7%増加した。
<意見交換>
意見交換では下村委員長が、「今回の宇宙基本計画は大変画期的である。中長期的な展望を持って事業計画を立てて、技術開発や設備投資ができる」と同計画への期待を示した。
また「10年間の計画であることと、予算が単年度であることの関係はどうなるのか」との委員の質問に対して、中村氏は「今回の宇宙基本計画は本文と工程表の構成で、総理も財務大臣も参加する宇宙開発戦略本部が決定した。将来のプロジェクトについて明確に約束したので、これに沿って各省庁は毎年度の予算要求がしやすくなる」と答えた。
【産業技術本部】