経団連のヨーロッパ地域委員会(小林喜光共同委員長、佐藤義雄共同委員長)は1月13日、東京・大手町の経団連会館でユルーン・ダイセルブルーム・ユーロ圏財務相会合議長(オランダ財務相)との懇談会を開催した。ダイセルブルーム議長の発言は次のとおり。
銀行同盟の確立、予算管理の強化、各国の構造改革に重点的に取り組んだ結果、危機前に比べてユーロ圏は強固になった。ユーロ圏の維持・強化に対する各国の政治リーダーの決意も固い。
しかしながら、成長の足取りは弱く、多くの失業者を抱えているのが現状である。ユーロ圏として、健全な金融・財政政策、質の高い投資、大胆な構造改革を一体的に推進する包括的な成長戦略を実行する必要がある。
現在、量的緩和が議論されているが(1月22日に導入を決定)、あわせて銀行部門を健全化し、魅力的な投資機会を増やさなければ効果はない。また、高齢化が進むなかで社会保障制度を維持するためには、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が同60%を超えないという規律に基づく財政の健全化が喫緊の課題である。
昨年11月に欧州委員会が発表した3150億ユーロの官民投資計画構想は、投資プロジェクトと官民双方の資金を組み合わせて実体経済の活性化を企図したものであるが、同時に規制の改善、資本市場の統合、域内市場統合の完成など投資環境の改善も求めている。
高齢化とグローバル化に対処するためには、構造改革が不可欠である。労働市場の機能の改善、総労働コストに占める所得税・社会保険料の比率の低減、労働者の技能水準の向上、製品市場の柔軟化、社会福祉制度の近代化、研究・イノベーションの質の向上などが必要である。これらの改革は長期的に潜在成長力を高めるばかりでなく、短期的な需要の拡大にもつながり得る。
米国、日本などとの自由貿易協定は構造改革に資するものであり、投資の拡大にもつながる。2015年中の妥結が望ましい。
【国際経済本部】