経団連は12月19日、東京・大手町の経団連会館で国民生活委員会消費者政策部会(高山靖子部会長)を開催し、横浜国立大学教育人間科学部の西村隆男教授、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)の古谷由紀子常任顧問から「消費者教育の現状と課題」について説明を聞き、意見交換を行った。概要は次のとおり。
■ 消費者市民社会の実現に向けて=西村氏講演
2012年8月に成立した消費者教育推進法は、個々の消費者が公正かつ持続可能な社会の形成に向けて積極的に参画する「消費者市民社会」の実現を目的に掲げている。消費者市民社会とは、消費者に自らの消費行動が現在および将来世代にわたって内外の社会経済情勢および地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚した消費行動を求めるものである。
消費者市民社会のもとでは、例えば企業にカーボンフットプリントを商品に表示することにより、温室効果ガスの排出量を「見える化」して消費者の選択に資することが求められる。また、もし消費者が商品に関して気づいた点があれば、いつ・どこで購入したのか、問題を解決するために何をしてほしいのか等を申し出るのに必要な書類としては「コンプレインレター」を用意することにより、企業と消費者が相互コミュニケーションを適切に図ることが重要になるだろう。
■ 企業の苦情対応と消費者教育=古谷氏講演
消費者教育の担い手として国・地方公共団体、消費者団体、事業者が存在するが、実際に商品を提供し、問い合わせ・苦情対応を受ける企業が消費者教育を行う大きな機会を有している。企業が日々の事業活動を通じて消費者教育を行うことへの社会の期待は大きい。
消費者相談の現場では、本来、企業に直接申し出るべき消費者が申し出ていない場合がある一方、企業にとっては、申し出るべきではない人が申し出ていると受け取られている場合がある。
14年に消費者問題の専門家で設立した「サステナビリティ消費者会議」では、消費者が製品による不満や苦情の解決を申し出る、あるいは企業に感謝を伝える「コンプレインレター」を作成したが、今後は消費者市民として、自分はどの段階にいるのかを確認できる「消費者市民チェックリスト」を作成し、消費者教育のツールとして使っていきたい。これにより、企業と消費者がともに持続可能な社会を目指した取り組みができるようにしたいと考えている。
<意見交換>
その後行われた意見交換では、会員企業から最近、商品の不具合についてインターネット上の書き込みにより「炎上」する場合が多いが、コンプレインレターが活用されることは有用である、といった意見が出された。
【政治社会本部】