経団連の産業技術委員会産学官連携推進部会(永里善彦部会長)は11月27日、筑波大学の永田恭介学長から、筑波大学のグローバル人材育成の具体策と、その実施に向けたガバナンスの強化策について説明を聞いた。
説明の概要は次のとおり。
◇◇◇
筑波大学は体育・芸術・障害科学といった他の総合大学には類をみない研究領域を持っている。全学生に占める留学生の数は、国立総合大学のなかでは1位である。大学があるつくば市も国際的な研究都市であり、キャンパスにいながら世界の多様性を実感できる。
筑波大学のミッションは、地球全体を視野に入れ、自分たちが生み出した「地球規模課題」を自分たちで解決できる知の創出と、それを牽引するグローバル人材を育成することにある。このミッション遂行には、大学のグローバル化が不可欠である。そこでまず、グローバル化のベースとして、文部科学省の「国際化拠点整備事業」のもと、英語のみで履修することが可能な27のプログラムや世界中の大学と連携するための海外拠点を整備した。そのうえで、台湾、ベトナム、ドイツ、韓国の大学との間でダブル・ディグリー(注)の協定を結び、双方の大学の要請・目的に合う人材を相互に送り合っている。また、海外の大学との連携において、教育システムと質の保証を含めた学位授与課程の国際的な互換性を得るために、「学位プログラム」の導入を進めている。学位プログラムとは、学部を超えた幅広い知識を持つ人材を育成するものであり、欧米の大学では一般的なシステムである。しかし、日本の大学では学部の壁が高く、学部を超えて教員が指導を行うことが難しいため、学位プログラムを実施している大学はほとんどない。
そこで、筑波大学では、学位プログラムに対応するため組織改編し、教育組織とは異なる、教員の研究内容で大くくりにした「系」という組織に教員を所属させることとした。教員は、必要に応じて大学院・学群で教育を行い、研究センターで研究を行う。海外や産業界からの教員招聘や、海外の大学が所有するキャンパスへの学位プログラム設置を進めており、グローバル人材の育成に向けてさらに導入範囲を拡大していく。
系へ配置する人員は、「戦略枠制度」により決めることとした。これは、各系に配置される人員を、系の長が希望する条件に基づき配分する「部局戦略枠」と、学長裁量で全学的な戦略に基づき配分する「全学戦略枠」とに分けて配置する制度である。これにより、学長は、系の人事へ全学的な戦略を反映させやすくなる。このようなガバナンス改革を進めるうえでは、教員と話し合いを深め、納得を得たうえで協力してもらえるよう努力することが欠かせない。
(注)ダブル・ディグリー=日本と外国の大学が、教育課程の実施や単位互換等について協議し、双方の大学がそれぞれ学位を授与するプログラム
【産業技術本部】